2004 Fiscal Year Annual Research Report
韓国のシルム(朝鮮相撲)の変遷過程に見られるナショナリズムの研究
Project/Area Number |
15700419
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
劉 卿美 長崎大学, 大学教育機能開発センター, 助教授 (00346941)
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Keywords | 伝統文化 / 朝鮮民族 / 朝鮮相撲 / シルム / 民族文化 / 韓国文化 / 伝統スポーツ / プロ・シルム |
Research Abstract |
元来伝統文化とは、民族の間で自生し生活とともに伝習され特性化していくものである。しかし日本による植民地支配、南北分断という民族消滅の危機に直面した朝鮮民族は、民族の独自性を保持しながら存続し続けるために、われわれの文化を創出することによって安定した社会構図を堅持する必要があった。本研究は、シルムと呼ばれる朝鮮相撲を通して、いわゆる伝統文化、民族文化と称されている事象が、いかなる過程を通して形作られていったかを明らかにし、それに現れる民族、国家というパラダイムを考察することにその目的がある。 16年度は日本国内で資料収集を行うと共に、昨年度より資料の提供を受けている韓国の大学、図書館などを訪れ、韓国語の文献や資料を入手した。また独立後、近代国民国家を形成する中で、シルムが韓国を代表する伝統スポーツとして位置づけられていく過程を、シルム関係者とのインタビュー、ビデオ資料などを通して調査・分析した。 韓国においてシルムがプロとして始まったのは1983年のことである。年に数回、国内の小都市を回りながら開催されるシルム大会では、競技を行う土俵や選手の周囲に様々な韓国的なるもの、あるいは韓国文化を想起させる装飾があしらわれる。しかしそれらは必ずしも韓国の伝統的な民俗文化を忠実に継承しているわけではない。なぜならば韓国においてシルムは、歴史の中にその規則や衣装などについて記述されたことがなく、つまりシルムの持つ様式としての伝統はほとんど存在しないからである。今回の調査では特に審判の衣装に注目し調査を行った。審判の衣装はプロ・シルムが出帆して以来、幾度なく変更がなされてきたが、その変更の過程からプロ・シルムがいかに韓国色を強めていったかを確認することができた。来年度はこのような研究成果に基づき、さらに視野を広げて事象を抽出し分析することによってプロ・シルム全体を概観したい。
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