Research Abstract |
本研究は,慢性疲労,疲労自覚症状,生活習慣,体力の各変数を調査・測定し,横断的および縦断的データを詳細に分析することによって,青年期における慢性疲労を規定する要因を明らかにすることを目的とした.本年度は疲労自覚症状とストレッサーに焦点をあて検討した. 15歳から18歳の健康な学生男女548名,および16歳から18歳の男子608名を対象に,24項目からなる青年用疲労自覚症状尺度SFS-Y(6下位尺度:集中思考困難,だるさ,意欲低下,活力低下,ねむけおよび身体違和感)とP.S.(慢性疲労のクライテリア)の調査を行った.判別分析およびロジスティック回帰分析によって,慢性疲労に対する疲労自覚症状の貢献を検討した.その結果,次の諸点が明らかとなった.SFS-YはP.S.を高い確率(74.0〜81.4%)で判別することが可能である.SFS-YはP.Sを高い確率(74.0〜81.4%)で判別可能であり,疲労自覚症状と慢性疲労との関連が示唆される.SFS-YによるP.S.の判別確率は異なる標本においても一定水準以上の値を示し,SFS-Yは慢性疲労を予測しうると推測される.集中思考困難に関する疲労自覚症状は,慢性疲労時に生起する可能性の高い症状と考えられる.なお,この結果は,論文誌「日本衛生学雑誌」に受理された(研究発表,雑誌論文欄参照). また,慢性疲労に関連する疲労自覚症状および生活ストレッサーの特徴を明らかにするために,青年期(15〜19歳)の学生を対象に調査を行った.384名(男子299名,女子85名)の有効回答からSFS-YとADES-20の基礎統計値を算出し,1日の疲労自覚症状および1週間の生活ストレッサーの特徴を検討した.生活ストレッサーが疲労自覚症状におよぼす影響を検討するために,潜在変数の因果関係を捉える多重指標モデルを設定し,その因果構造を分析した.その結果,学力試験後は学業をストレッサーとして認識する者が多い一方,生活ストレッサーは学業のみならず家族関係に因るところが大きい.また,生活ストレッサーが疲労自覚症状におよぼす影響は中程度である.なお,この結果は各学会誌上で発表した(研究発表,雑誌論文欄参照).
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