Research Abstract |
まず,東京大都市圏の郊外地域に位置する,千葉県野田市の住民を対象として就業と通勤行動に関する研究を行った。大都市郊外の住宅地域では,就業者の多くが東京都内で就業しているが,旧市街では地元で就業する地元出身者が多く,農村部では鉄道交通へのアクセスが悪いためにモータリゼーションが進行していた。これらの地域的な要因が,既婚男性,既婚女性,未婚男性,未婚女性といった,配偶関係別にみた通勤行動の性差を生じさせていることが明らかになった。本研究については,2003年8月にスロベニアのリュブリャナで開かれた,IGU(国際地理学連合)のUrban-Commissionにて口頭発表を行い,その一部はGeoJournal誌に投稿中である。 また,地域の産業と,そこで働く就業者の状況について雇用者側の視点から把握するために,鳥取市に立地する大手電機メーカーS社の子会社T社を対象として,生産体制の変容と,それに伴う雇用状況の変化と現状について調査を行った。日本の大手電機メーカーは,アジアへの生産拠点の移管を急速に進めているが,国内生産においては,さらなるコストダウンのために請負(アウトソーシング)の導入を進めていた。マルチメディア機器を製造するT社の子会社M社では,製造ラインの6割以上を請負社員が占めていた。これは,2001年以降,50歳を過ぎた正社員の一部が転進支援措置によって退職し,それに変わる労働力として賃金の安い社外工を導入したことによる。このことは,地域の雇用の不安定化の原因ともなりうる現象といえ,今後さらなる観察が必要である。本研究については,2004年度日本地理学会春季学術大会において口頭発表を行い,その一部は分担執筆の著書の中で発表した。 さらに,広島都市圏と東京都市圏のパーソントリップデータを借用し,現在,個人属性による通勤行動パターンの差異について分析中である。
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