Research Abstract |
東京大都市圏の郊外住民を対象として就業と通勤行動に関する研究を行った。大都市郊外の住宅地域では,就業者の多くが東京都内に通勤しているが,旧市街では地元で就業する地元出身者が多く,農村部では鉄道交通へのアクセスが悪いためにモータリゼーションが進行していた。また,これらの地域的な要因が,配偶関係別にみた通勤行動の性差を生じさせていることも明らかした。本研究は,2003年8月にスロベニアのリュブリャナで開かれたIGU(国際地理学連合)のUrban-Commissionにおいて口頭発表を行ったものであり,その内容は2004年に発刊されたプロシーディングスに掲載された。さらに,世代間で平均通勤時間の性差に逆の傾向があること,すなわち,大都市郊外において,既婚者は男性の方が女性より平均通勤時間が長いが,未婚者は,女性の方が男性よりも長いことに着目し,大都市郊外で成長した若年者の居住地移動の性差,特に,未婚女性の独居が男性のそれよりも困難な状況にあることが,未婚女性に長距離通勤を強いる原因となっていることを指摘した。この成果は,地理学の国際学術雑誌であるGeoJournal誌に審査論文として掲載された。 また,同じく大都市郊外住民の通勤行動と求職行動を,ライフコース,世代,性差によって分析した結果,夫(父親)については,大都市圏出身者と非大都市圏出身者で通勤行動が大きく異なること,妻(母親)は出産後に一度離職する者が多く,子供の成長後に広告や社会的ネットワークを通じて再就職していること,彼らの子供たちの世代は,いずれも大都市圏出身者であることからライフコースが類似しており,求職行動については,特に男性において学歴による違いが大きいことを明らかにした。本研究については,2004年8月にイギリスのグラスゴーで開かれた,IGUのUrban-Commissionにて口頭発表を行った。
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