2003 Fiscal Year Annual Research Report
生物膜中における遺伝子組換え菌から土着微生物へのプラスミド伝播
Project/Area Number |
15710028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
惣田 訓 大阪大学, 工学研究科, 助手 (30322176)
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Keywords | 生物膜 / 遺伝子組換え菌 / プラスミド |
Research Abstract |
環境浄化に利用できる遺伝子組換え微生物の育種が世界的に進められている。しかし、それらを野外で使用するためには、リスク評価を行わなければならないが、現状ではその知見はほとんど得られていない。本研究では、遺伝子組換え菌を利用して廃水を処理する想定先であり、また遺伝子組換え菌が誤って放出された場合の流入先である下水処理場の生物膜(活性汚泥)を対象とし、実験用大腸菌から土着微生物へのプラスミドの接合伝達を実験室で模擬した。 プラスミドは、遺伝子工学で利用されているベクターの由来の一つであるグラム陰性広宿主域、自己伝達性のRP4を用いた。実験用大腸菌としては、遺伝子工学で汎用されているEscherichia coli K-12 C600を用いた。また、大阪のM下水処理場から採取した活性汚泥を元に生物膜を形成した。E.coliC600(RP4)と活性汚泥細菌を混合し、フィルターメイティングによって生物膜状にして両者を高密度で24時間接触させた。その結果、非常に高確率でRP4が活性汚泥中の細菌に接合伝達された。接合菌からは、RP4と等しい大きさのプラスミドが抽出され、PCR反応にとってプラスミド上の自己伝達遺伝子traGも検出され、活性汚泥中の細菌が実験用大腸菌からRP4を接合によって受け取ったことが確認された。この接合菌を分離・同定したところ、下水由来と思われる腸内細菌が3株、活性汚泥優占菌と思われるPseudomonas属が3株得られた。 活性汚泥優占菌に接合伝達されたRP4は、二次伝達によってさらに広範囲に伝播し、長期的に生存する可能性が高いものと推測される。引き続き実験を行い、異なるプラスミドと生物膜の組合わせでの知見が必要である。
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