2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15710038
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
矢部 徹 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 研究員 (50300851)
|
Keywords | 藻場 / HGMアプローチ / 生態系機能 / セディメントトラップ / 酸化還元電位 / 低質 / 干潟 |
Research Abstract |
本年度は、干潟内に藻場がひろがる千葉県富津干潟を主な調査地点とし、1 干潟内藻場と対照とする干潟内裸地(以下、それぞれ藻場、裸地)での底質の物理化学性の比較、2 藻場および対照である裸地に沈殿ビンを設置し、藻場内外で採取された底質の総量と強熱減量を測ることによって有機物の量を定量的に評価した。3 底質のトラップ効果を評価するために藻場および裸地に蛍光砂をまき、一定期間後に周囲から採取された砂の量を計測するという実験を行った。実験の結果、藻場と裸地では底質の含水率や密度には有意な差が見られなかった。酸化還元電位は藻場のほうが低かった。有機物量、可給態窒素と可給態リンの濃度は藻場において有意に高く、有機物の供給効果が見込まれた。沈殿ビン実験の結果、底質の全沈降フラックスは裸地で高く、底質がよく巻き上がって沈降する頻度が高いことが予想された。いっぽうで藻場構成種の植物遺骸量は藻場と裸地で大きな差が見られず、地上部のトラップ効果は明確ではなかった。これは干潟内に広がる藻場の構成種が小型の海草コアマモであったことに関連していると推測された。蛍光砂分散実験の結果、藻場では裸地に比べて底質が拡散せず、地固め効果があることが確認された。 以上の結果より、干潟に広がる藻場では、干潟全体に植物遺骸などの有機物を供給していること、地固め効果があり藻場内部の底質の撹乱頻度を下げ、動物および植物ベントスの住み込みの場としての機能をより高めていること、底質表層に酸化層と還元層を同時に存在させることを可能にしていることを明らかにした。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] 広木幹也, 矢部徹, 野原精一, 宇田川弘勝, 佐竹潔, 古賀庸憲, 上野隆平, 河地正伸, 渡辺信: "加水分解酵素活性を用いた日本各地の干潟底泥の有機物分解機能評価"陸水学雑誌. (64)2. 113-120 (2003)
-
[Publications] KOGA, T., SATAKE, K., YABE, T., NOHARA, S., UENO, R., UTAGAWA, H., HIROKI, M., KAWACHI, M., WATANABE M., M: "New records of rare species of three bivalves and one crab from the estuary of the Tagori River, Saga Prefecture, Ariake Inland Sea, Japan."The Yuriyagai. 9(2). 43-50 (2003)
-
[Publications] 広木幹也, 花菱香奈, 宇田川弘勝, 矢部徹, 佐竹潔, 野原精一: "干潟底泥中の酵素活性の分布と変動-干潟生態系の分解機能を評価するための留意点-"陸水学雑誌. 64(3). 185-193 (2003)
-
[Publications] 藤田光則, 矢部徹, 小田倉碧, 土谷岳令: "ヨシ刈りがヨシ根圏に及ぼす影響"日本陸水学会第68回大会講演要旨集. 285 (2003)
-
[Publications] 石井裕一, 町田基, 相川正美, 矢部徹, 瀧和夫, 立本英機: "都市域の干潟における大型緑藻類中の重金属含有量"日本化学会83回春季年会予稿集. 211 (2003)
-
[Publications] 矢部 徹, 國井秀伸: "5.河口域干潟調査 5-5.植物(藻場・塩性湿地を含む)調査.pp.300-304. In 須藤隆一編:「地球環境調査辞典 陸域編」"フジテクノシステム,東京. 1166 (2003)