2003 Fiscal Year Annual Research Report
水道水中の強力な変異原物質MXの変異誘発機構に関する研究
Project/Area Number |
15710041
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
杉山 千歳 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助手 (00326125)
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Keywords | 3-chloro-4-(dichloromethyl)-5-hydroxy-2(5H)-furanone / MX / DNA付加体 / 8-hydroxyguanine / 水道水 / 塩素処理副生成物質 |
Research Abstract |
水道水に含まれる塩素処理副生成物質の一つであり、変異原性および発がん性を有する3-chloro-4-(dichloromethyl)-5-hydroxy-2(5H)-furanone(MX)の変異誘発機構を解明するために、MX-DNA付加体形成能および8-hydroxyguanine(8-OH-G)形成能について検討した。 MX-DNA付加体形成能は、DNAの構成成分である2'-deoxyguanosine、2'-deoxyadenosine、2'-deoxycytidineのそれぞれとMXをN,N-dimethylformamide中、室温および50℃で反応させた後、フォトダイオードアレイ検出器付HPLCで分析することにより調べた。その結果、各ヌクレオシドとMXの反応液で、それぞれを単独でインキュベーションした場合にはみられない新たなピークが検出された。また、これらのピーク面積は経時的に増加し、室温に比べ、50℃では短時間で顕著な増加がみられた。また、これらのピークに含まれる付加体と思われる物質は、UV340nm付近に吸収極大を示した。MXと反応させたcalf thymus DNAを酵素分解し、得られたヌクレオシドを分析したが、これらのピークと一致するピークは検出されなかった。 8-OH-Gは、酸化的条件下でDNA中に生成し変異を引き起こす。8-OH-G修復酵素である8-OH-G DNA glycosylaseを欠損しているため、8-OH-Gによる変異を起こしやすいS.typhimurium YG3008株を用いてAmes試験を行い、同じ遺伝子型を持ち、8-OH-G DNA glycosylaseを発現しているS.typhimurium TA100株での変異原性と比較したところ、ほぼ同程度であった。このことから、MXによる変異誘発に対する8-OH-Gの関与はほとんどないものと考えられる。
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