2005 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染微量金属(ヒ素)の慢性摂取による炎症及び発癌の分子機構の解明
Project/Area Number |
15710043
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
櫻井 照明 徳島文理大学, 薬学部, 助教授 (30266902)
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Keywords | ヒ素 / 慢性中毒 / メチル化 / グルタチオン / 金属 / トランスポーター / アポトーシス / 活性酸素 |
Research Abstract |
金属の人体に対する影響は、水銀など公害問題を起こした金属については精力的に研究されてきた。しかし、その他の金属については余り研究されていない。近年アジアでは、井戸水などに微量に混入するヒ素を住民が長期間摂取した結果、広範囲に慢性ヒ素中毒が発生し、大きな社会問題となっている。慢性ヒ素中毒に苦しむ人々を救う事は世界的な急務とされる。そのためには、未解明な慢性ヒ素中毒の発症機構を解明しそれを防御する必要がある。本研究は研究代表者のこれまでの研究成果を元に、ヒ素中毒発症機構を、ヒ素のメチル化代謝に伴うアポトーシスの制御という新しい観点から解析した。現在の学会では、無機ヒ素がヒト体内でメチル化を受ける過程で、毒性の強い反応中間体であるメチル3価ヒ素が生成することを根拠に、ヒ素のメチル化代謝は毒性を増す負の生体反応であるとされている。我々はこの仮説が正しいか確かめるため、生体内で実際に生成されるメチル3価ヒ素化合物であるモノメチル3価ヒ素グルタチオン複合体、或はジメチル3価ヒ素グルタチオン複合体を、従来法より簡便且つ安全な方法で化学合成し、その細胞毒性を培養肝細胞を用いて解析した。その結果、これらのメチル3価ヒ素化合物は、培養液中で容易にメチル3価ヒ素イオンとなり、未知のトランスポーターから細胞内に大量に侵入して強い毒性(アポトーシスの誘導)を示す事が明らかとなった。この毒性は細胞内グルタチオン濃度に依らず、細胞内で産生される活性酸素にも非依存的であった。また、メチル3価ヒ素イオンの細胞内流入は、生体レベルのグルタチオンや他のチオール化合物の添加で完全に阻害され、毒性も抑制された。以上より、ヒ素のメチル化が毒性を増す反応であるという証拠は得られなかった。
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