2003 Fiscal Year Annual Research Report
放射線エネルギーの直接的付与によって生じるDNA損傷部位の化学構造と修復性の解明
Project/Area Number |
15710048
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
赤松 憲 特殊法人日本原子力研究所, 保健物理部・放射線リスク研究室, 研究員 (70360401)
|
Keywords | 軟X線 / γ線 / 高速液体クロマトグラフィー / 電気泳動 / 塩基脱離 / pUC19 plasmid DNA / 酵素分解 / 架橋 |
Research Abstract |
本研究の目的に迫るための最初のアプローチとして、照射DNA試料にはpUC19プラスミドDNA(2686塩基対)の制限酵素Sma I消化物(PUC19/Sma I、直鎖DNA)を選択した。また照射に用いる放射線には軟X線(光吸収によって発生するオージェ電子、光電子が数100eV程度となる)、標準放射線としては^<60>Coγ線を選択した。照射DNAの解析にはアガロースゲル電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。HPLCの感度を考慮して照射線量はkGy〜MGyの範囲で行った。電気泳動による解析の結果、軟X線、γ線ともに特にkGyレベルの領域でpUC19/Sma Iより高分子量側のシグナルが上昇していることが確認できた。DNA同士の架橋の可能性が考えられるが、さらなる解析が必要である。また両線質ともに2MGyで20pmol/μg DNA程度の塩基脱離が生じるようである。これはDNAに含まれる全塩基のおよそ1%に相当する。次に照射DNAを酵素分解した場合、どれだけのヌクレオシドが未損傷で残っているかについて調べた。DNase I(DNAに切れ目をいれる酵素)によって照射サンプルを断片化した後、フォスフォジエステラーゼI(PD:DNAの3'末端から順に消化しヌクレオシド-5'-モノリン酸を生成)で処理し、アルカリフォスファターゼで脱リン酸処理した。その結果、未損傷ヌクレオシドの収率は、両線質とも2MGyの照射線量において、未照射DNAを消化した場合の約9割しかなかった。同じ線量で塩基脱離が1%程度しか生じていないので、照射DNA中に含まれる全ヌクレオシドの1割程度は酵素的に消化できなかったことになる。この原因の詳細については今後明らかにしていく予定である。一方、線質間の違いについても測定精度の向上に努めながらさらに追求していきたい。
|