Research Abstract |
本研究室で開発した光動力キラル分子モーターは、熱異性化と二重結合のシス-トランス光異性化により単一方向の回転を起こすことがわかっているが、熱異性化における反応速度が遅いことに改良の余地が残されていた。本年度の研究においては、キラル分子モーターの新規五員環型モデル(2R^*,2'R^*)-(P^*,P^*)-trans-1を開発し、回転における全ての光、熱異性化反応の動力学をNMRを用いて明らかにすることに成功した。(2R^*,2'R^*)-(P^*,P^*)-trans-1から出発し、-78℃条件下モノクロメーターを用いて312±30nmの光を照射すると(2R^*,2'R^*)-(M-*,M^*)-cis-2へ光異性化し(trans-1:cis-2=9:91)、(2R^*,2'R^*)-(M^*,M^*)-cis-2に30℃の熱を加えると半減期13分で(2R^*,2'R^*)-(P^*,P^*)-cis-3に熱異性化する(E_a=20.7kcal mol^<-1>)。(2R^*,2'R^*)-(P^*,P^*)-cis-3に-78℃条件下モノクロメーターを用いて330±30nmの光を照射すると(2R^*,2'R^*)-(M^*,M^*)-trans-4へ光異性化し(cis-3:trans-4=4:96)、(2R^*,2'R^*)-(M^*,M^*)-trans-4に-10℃の熱を加えると半減期13分で(2R^*,2'R^*)-(P^*,P^*)-trans-1に熱異性化し(E_a=17.1kcal mol^<-1>)、360度の回転を達成する。この新規五員環型モデルは、従来の六員環型モデルと比べて、熱異性化の活性化エネルギーの低下により反応速度が大きく向上することがわかった。 一方、キラルC_<60>フラーレンcis-3二付加体(R,R,^<f,s>A)-[CD(+)281]-5の単結晶化に成功し、初めてX線結晶構造解析によってその絶対配置を明確に決定することに成功した。
|