2005 Fiscal Year Annual Research Report
分子インプリントの「星形ナノ粒子」と液膜を用いたキラル分離プロセスの開発
Project/Area Number |
15710095
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉見 靖男 芝浦工業大学, 工学部, 助教授 (30267421)
|
Keywords | 液膜 / 分子インプリント / コロイド / リビングラジカル重合 / 星形高分子 / キャリア / 輸送能評価 / 乳化重合 |
Research Abstract |
乳化重合法による、L-フェニルアラニンでインプリントした星形高分子の合成、およびそれをキャリアとした、L-フェニルアラニンの液膜輸送を試みた。 ジメチルジチオカルバミン酸ベンジルを開始剤としてメチルメタクリレートをリビングラジカル重合し、末端に開始剤能を残した直鎖型ポリメチルメタクリレート(リビングPMMA)を合成した。このリビングPMMAをクロロホルムに溶解し、鋳型としてのL-フェニルアラニン、架橋性モノマーのメチレンビスアクリルアミド、および機能性モノマーのメタクリル酸を水に溶解した。両溶液を石英セルに仕込み、紫外線照射しながら激しく撹拌した。その結果、非水溶性溶媒中で高い分散能を持つコロイド状の共重合体が得られた。この共重合体を光散乱法で分析したところ、平均直径は200nmであり、前回の溶液重合法で合成したものと変化はなかったが、直径分布幅は小さくなった。核磁気共鳴分析の結果、この共重合体は、星形高分子であることも分かった。さらに、この星型高分子をクロロホルムにて溶解し、U字管に仕込んだ。供給側水相にL-フェニルアラニンを溶解したリン酸緩衝水溶液(pH7.4)、回収側水相を酢酸緩衝水溶液(pH4.0)として、バルク液膜実験を行った。両水相のL-フェニルアラニン濃度経時変化から、輸送速度を評価した。 160時間に渡るバルク液膜実験の結果、回収相側の濃度には、L-フェニルアラニンの緩やかな濃度上昇が見られた。しかし、供給側には濃度減少は見られなかった。一方、クロロホルムに星形高分子溶かさなかった場合、あるいはL-フェニルアラニンを加えずに合成した星型高分子を溶解した場合は、回収相にL-フェニルアラニンは全く検出されなかった。この結果は、星形高分子が液膜用キャリアとして、機能しうることを示唆している。 ただし実用化するには、この高分子の輸送能はあまりに低い。PMMAによる疎水部位があまりに大きいため、鋳型が特異結合部位に、アクセスしにくいためであろう。リビングPMMAに代わり、疎水鎖の短い開始剤(炭素鎖20程度)を、用いて星形高分子を合成する方法を開発している。
|