2003 Fiscal Year Annual Research Report
南アジア地域において自然災害が経済発展に及ぼす影響の定量的把握
Project/Area Number |
15710132
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Research Institution | The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster Reduction and Human Renovation Institution |
Principal Investigator |
永松 伸吾 (財)阪神, 淡路大震災記念協会・(人と防災未来センター)・研究部, 専任研究員 (90335331)
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Keywords | インド / 開発 / 経済発展 / 地震 / 災害復興 / 農業 / 産業 / 経済政策 |
Research Abstract |
1995年に大地震の被害を受けた神戸とは違い、2001年インド西部地震の被災地であるカッチ地方の経済はかつてない活況に満ちている。その理由は(1)インド経済全体が年率7%〜8%の高度成長にあること、(2)復興事業などで多額の公共事業が発生していること、(3)被災地における産業振興策として、新規投資事業に対する付加価値税・売上税の5年間免除政策などを実施していること、などが挙げられる。特に(3)によって、現在までに震災被害額のおよそ2割に相当する新規投資が行われた、または行われていることが現地調査で明らかになった。 こうした新規投資ブームが被災地における雇用を拡大させる一方で、農業や既存産業から工業への労働力の代替が急速に進んでいる。今後も新規産業の立地が多く見込まれることから、次のような諸点が今後の経済発展において重要な課題となると思われる。第1に、農業生産性の向上についてである。工業部門が労働力を吸収することによって賃金水準が上昇し、農業部門での労働投入量が減少し、農家の収益を圧迫することが予想されるため、農業生産性を同時に向上させることが不可欠である。これについては灌漑用ダム等の建設が同時に進められているがこの効果に注目する必要があるだろう。第2に、人々の雇用機会についてである。新規産業への就業者はほとんどの場合労働力として必要な研修や訓練を施され、採用に当たっては選抜も行われている。農業部門でも技術移転が行われているという。これらの政策は教育を十分受けていない人々とそうでない人々との格差を拡大する恐れがある。 さらに、神戸の経験からすると遅れているように思われる住宅復興についても、住民参加による意思決定および住宅建設のプロセスに時間を割いている結果であると思われた。こうした徹底的な住民参加の背景には経済復興が極めて順調に進んでいることと無縁ではないと思われる。
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