2004 Fiscal Year Annual Research Report
南アジア地域において自然災害が経済発展に及ぼす影響の定量的把握
Project/Area Number |
15710132
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Research Institution | The Great Hanshin-Awaji Earthquake Memorial Disaster Reduction and Human Renovation Institution |
Principal Investigator |
永松 伸吾 人と防災未来センター, 研究部, 専任研究員 (90335331)
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Keywords | 防災 / 災害 / インド / 経済発展 / 開発 / 産業政策 / 産業構造 / 経済政策 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は以下の通りである。 第一に、昨年度の現地調査の成果を元に、インド西部グジャラート地震が地域経済の発展プロセスに及ぼした影響を定量的に把握した。具体的にはグジャラート州の各地点における物価水準が地震によってどのように変化したかを分析した。その結果、(1)インドの平均的物価水準に比べて、グジャラート州のほとんどの地点において物価水準の上昇がみられたこと、(2)同時にGDPの増大も観察されていることから、震災復興需要が経済全体に波及し、市場において超過需要の状態が生まれていること、が明らかになった。 この観察事実は、阪神・淡路大震災の被災地である神戸で見られた現象とは大きく異なる。その理由は両者の産業構造の違いと、産業復興政策に求めることが出来た。前者について言えば、グジャラート州の産業構造は第2次産業の比率が神戸と比べて非常に大きいために、建設需要の波及効果が大きいことがある。一方神戸ではほとんどが第3次産業によって構成され、復興需要を地域経済で吸収することが出来なかったのである。 後者の復興政策については、グジャラートでは地震後新しく被災地に投資を行う企業について、事業税および売上税の減免措置を行っている。加えて、復旧事業によって新しく建設された道路による交通事情の改善、質は高くないが低廉な労働力が豊富であることなどの理由により、新規投資が促進されている。こうしたことによって被災地には地震による直接被害額の80%に及ぶ金額の投資が行われたことが判った。 第2に、こうした成果を参考にしつつ、経済成長の災害被害の関係に関する理論的な分析を行った。これによれば、経済成長とともに災害被害はU字型カーブを描くことが導かれた。それは経済成長の初期においては、成長の果実が防災力向上に貢献するということを示し、一方成長の後期においては経済成長がむしろ災害被害規模を拡大する方向に働いていることを示すものである。
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Research Products
(2 results)