2003 Fiscal Year Annual Research Report
湖沼における植物の種多様性の保全のための発芽生態学的研究
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15710173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西廣 淳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60334330)
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Keywords | 湖沼 / 水生植物 / 種子発芽 / 沈水植物 / 霞ヶ浦 / 土壌シードバンク / 保全生態学 / 自然再生 |
Research Abstract |
(1)発芽特性のスクリーニング 霞ヶ浦の湖岸に生育する植物39種の種子を採取し、発芽・休眠温度特性および発芽・休眠解除に対する冠水の影響を明らかにする室内実験を行った。その結果、春発芽の性質をもつ種が23種、裸地を選択して発芽する性質をもつ種が16種確認された。また冠水条件下で発芽が抑制される種が32種確認された。一方、文献調査から霞ヶ浦がかつては冬から春に水位が低下し、春に冠水しない裸地が湖岸に広く存在したことが示され、これらの種は自然の水位変動に適応した発芽特性を持つことが示された。それに対して、現在の霞ヶ浦をはじめとする湖沼の多くでは、本来水位が低かった季節にも高い水位を維持する管理が行われており、このことが湖岸植生の衰退要因になっていることが示唆された。これらの成果は原著論文として登校中であるが、Aquatic Botany誌から仮掲載許可の通知を受けている。 (2)植生と物理環境の動態の調査 水分条件について環境勾配がある野外実験施設に水生植物の土壌シードバンクを含む土砂をまきだし、発芽・定着場所を調べることにより水生植物の発芽・生育場所と比高の関係を分析した。この成果は論文として公表した。また霞ヶ浦の湖岸で、地表面温度等の物理環境の連続測定を開始した。 (3)発芽・定着適地の検証実験 富栄養化した湖沼において再生が望まれる植物である沈水植物のモデルとしてササバモを選び、様々な水深・土壌水分条件にシードバックを設置し、発芽挙動を調べる実験を開始した。測定は来年度まで継続する予定である。
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[Publications] 西廣淳, 高川晋一, 宮脇成生, 安島美穂: "霞ヶ浦沿岸域の湖底土砂に含まれる沈水植物の散布体バンク"保全生態学研究. 8. 113-118 (2003)
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[Publications] 柚木秀雄, 高村典子, 西廣淳, 中村圭吾: "土壌シードバンクとバイオマニピュレーションを活用して霞ヶ浦湖岸に沈水植物群落を再生する試み"保全生態学研究. 8. 99-111 (2003)
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[Publications] 西廣淳, 鷲谷いづみ: "自然再生事業を支える科学(自然再生事業-生物多様性の回復をめざして.鷲谷いつみ, 草刈秀紀編,築地書館.分担執筆)"築地書館. 20 (2003)
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[Publications] 西廣淳, 中村圭吾: "湖岸植生帯の現状とその水質浄化機能(エコテクノロジーによる河川・湖沼の水質浄化-持続的な水環境の保全と再生-"ソフトサイエンス社(島谷幸宏, 細見正明, 中村圭吾編分担執筆). 7 (2003)