2004 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦期英国文化外交における自国表象の政治性:ブリティッシュ・カウンシルを中心に
Project/Area Number |
15710177
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 講師 (10345077)
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Keywords | 地域研究 / 外交史・国際関係史 / 国際関係論 |
Research Abstract |
本研究は、戦後冷戦期、とくにイギリスの国際交流機関であるブリティッシュ・カウンシルが旧ソ連・東欧諸国に向けて展開した文化外交において、イギリスが自国をどのように表象することで効果的な外交戦略を達しえたのかを、歴史実証的かつ理論的に解明しようとするものである。 ブリティッシュ・カウンシルは、文化や教育を媒介とする海外諸国との交流を重視した活動を行い、国際言語としての英語教授を筆頭に世界中にその活動網を張りめぐらせることに成功した、英国外務省所管の外郭公共団体である。1934年の設立以来「非政治性」を標榜してきたこの団体が、文化の世界的交通が鉄のカーテンによって遮断され、公的政治外交を行うことが至難の業であった冷戦期に、なんらかのかたちでソ連・東欧諸国に文化使節を送り出していた事実は、政治と文化の癒着の構造を考察するうえで興味深い論点を提示してくれる。 採択年度2年目の2004年は、8月にイギリス出張を行い、英国公文書館(PRO, National Archives)においてソ連・東欧諸国関係の非開示文書(50年間および75年間)を集中的に閲覧し、資料収集を進めた。また、今年度はこれまでの研究に加え、ロシア・ポーランド・チェコ・ハンガリー各国のカウンシル事業所に赴き、ヒヤリング調査および資料収集を並行して行った。とくに、プラハにおける元カウンシル・スタッフへのインタビューは、オーラル・ヒストリーの資料として非常に有用なものとなった。英国公文書館において写真撮影した史料については、帰国後、資料整理要員を謝金にて雇用し、デジタルデータ化のための作業を続けている。
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