2003 Fiscal Year Annual Research Report
シベリア民族混住地域における農村ロシア人の社会集団再編と自他認識の変容過程
Project/Area Number |
15710183
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊賀上 菜穂 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 助手 (10346140)
|
Keywords | シベリア / ブリヤート共和国 / ロシア人 / ブリヤート人 / タタール人 / 民族意識 / 信仰 / ポスト社会主義時代 |
Research Abstract |
本年度は前年度から継続調査中のロシア系住民の信仰の問題、およびロシア人サブグループ間の相互関係について、5本の論文・記事を執筆した。報告者は、ソ連崩壊後、ロシア人サブグループ間の相違が強化され、社会集団の再編に影響を与えているかどうかに関心を持っていた。調査の結果、ロシア人サブグループの自他認識は、「信仰」「血統」「居住地」「民族籍」に基づいていることがわかった。近年若年層の間でも信仰への関心が高まりつつある。だが旧教徒(古儀式派)の場合、信仰拠点が極めて少ないため、ロシア正教への接近が観察された。また旧教徒と正教徒間の結婚が一般化したために、両者の区分を意識しない人々が増加している。これにより、自らのアイデンティティとしては「ロシア人」という民族籍が最大の意味を持つようになっている。 それではロシア人と非ロシア人はいかなる関係を構築しているのか。この問題意識に基づき、本年度は2回のフィールドワークを行った。2003年7月23日〜8月23日には、ロシア連邦ウラン・ウデ市、ノヴォシビルスク市、モスクワでの資料収集を行うとともに、ロシア連邦ブリヤート共和国ビチュラ地方とムホルシビリ地方において、ロシア人コサック(カザーク)およびチュルク系のタタール人の調査を行った。また2004年2月20日〜3月17日には、同ウラン・ウデ市で資料収集を続行するとともに、ムホルシビリ地方においてモンゴル系のブリヤート住民とロシア人住民の関係を調査した。これらの調査結果は次年度に分析・発表する予定である。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 伊賀上 菜穂: "『ロシア人』と『旧教徒』の間-ブリヤート共和国セメイスキーの信仰と自己認識の変容-"帯谷知可, 林忠行編『スラブ・ユーラシア世界における国家とエスニシティII』JCAS Occasional Paper(国立民族学博物館地域研究企画交流センター). No.20. 59-65 (2003)
-
[Publications] 伊賀上 菜穂: "体制転換とロシア旧教徒-ブリヤート共和国セメイスキー住民の信仰のゆくえ-"『東北アジア研究』(東北大学東北アジア研究センター). No.7. 71-91 (2003)
-
[Publications] 伊賀上 菜穂: "ブリヤート共和国ロシア人正教徒の『系譜』と現在-混血、信仰、民族籍-"『ポスト社会主義圏における民族・地域社会の構造変動に関する人類的研究-民族誌記述と社会モデル構築のための方法論的・比較論的考察-』平成13年度〜14年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告(研究代表者・佐々木史郎、国立民族学博物館). 173-185 (2003)
-
[Publications] 伊賀上 菜穂: "バイカル湖の南にロシア旧教徒を訪ねて-ロシア連邦ブリヤート共和国の農村ロシア人-"『Arctic Circle』(北海道立)北方民族博物館. No.46. 14-17 (2003)
-
[Publications] 伊賀上 菜穂: "ブリヤート共和国旧教徒の信仰実践(下)"なろうど. 46号. 16-22 (2003)