2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720008
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
江口 聡 京都女子大学, 現代社会学部, 助教授 (30329932)
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Keywords | 情報倫理 / 集団責任 |
Research Abstract |
情報技術の普及によって、人びとの行為が集積され、思いもよらぬ結果をもたらすことがある。そのような場合、集団の責任はどのように問うべきであろうか。最近注目を「応答責任論」はこのような集団責任の問題については有効ではない。このような立場は、「責任を問うこと」と「責任があること」の違いを見失しなっているからである。集団責任を問う場合には、対面しての応答やコミュニケーションの問題としては扱いにくい。それは、(1)責任を問うべき「個人」が誰であるか明らかでなく、また(2)個人に還元した場合にはその行為自体は些細な落ち度しか見られないが結果は重大であり、(3)他人の行為について理由応答するということの意味が不明確であり、(4)行為者が多数であったり匿名であったりするため、実際に対面で問責されることはない、等といった集団責任の難しさがあるためである。 むしろ集団責任の問題は、帰結主義的に解釈されるべきであり、このような認識に立つならば、「誰に一番責任があるか」などを問うのではなく、むしろ、どのような目的のためにどのような責任を問うことが有効であるかという目的論的な枠組が有効であると思われる。 われわれが集団に責任を帰すさまざまな目的がある。それは(1)感情的な安定のため、(2)自分に帰せられる責任をやわらげるため、(3)不当な行為に罰則を与え、不当な利益などを相殺することを正当化するため、(4)被害者に賠償するため、(5)欠陥がある集団の政策や方針を変更するため、(6)応報的刑罰を正当化するため、(7)組織を恥かしめるため、そして(8)個人の行為やその帰結について十分な情報が与えられている場合は、組織やグループを非難するより、個人を直接に非難した方がよい結果が得られる公算が大きい。そのような場合にわれわれは集団を非難することで望ましくない帰結を避けようとするのである。
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Research Products
(1 results)