2003 Fiscal Year Annual Research Report
中国中世仏教の類書の研究―梁代の『経律異相』を中心に
Project/Area Number |
15720013
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮井 里佳 埼玉工業大学, 人間社会学部, 講師 (80290998)
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Keywords | 類書 / 経律異相 / 法苑珠林 / 中国中世仏教 |
Research Abstract |
中国における仏教の類書(「類」(テーマ)毎に仏教経論(あるいは抄約)を収録・編集した百科事典のような基本図事)のうち、現存最古である梁代の宝唱撰『経律異相』五十巻を対象とし、主として『経律異相』の成立や構造に関わる考察研究を行なった。 一、先行研究を参照しながら、『経律異相』の歴史的な成立過程について確認し、また『経律異相』の構成について、唐代の中国伝統的な類書である『芸文類聚』百巻と唐代の仏教類書である『法苑珠林』百巻と比較考察した。(研究途上の仕事として、現在の中国における代表的研究者である葛兆光氏の論考を邦訳紹介した。「葛兆光著『目録・類書と経典注疏に見られる七世紀中国の知識と思想の世界の輪郭』(翻訳紹介)」)『経律異相』は、時代の要請(政府の意図)に従って編纂され、その構造は中国伝統的な類書を踏襲していることが確認できた。また後世の類書『法苑珠林』に仏教的な要素が組み込まれる過程については、ある推論を立てているが、今後検証していく必要がある。 二、『経律異相』における『観仏三昧〔海〕経』の抄出引用について検討考察した。『観仏三昧〔海〕経』の引用全箇所とも経の文脈に沿った抄出のしかたであるが、特に「観仏」を宣揚するものではなく、この経が『法華経』などと並んで多く引用される理由についてはなお考察を要する。また『法苑珠林』における『観仏三昧〔海〕経』の抄出引用は、『経律異相』を踏まえ、かつより多くなっており、またその分類(類目への配当)はよりわかりやすい。 〔一、二に関して、第2回東アジア仏教研究会年次大会(2003年12月)において論文を発表した(雑誌論文としては未発表)。〕 三、『経律異相』諸本の調査・収集については、未だ芳しい結果を得られていない。
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Research Products
(1 results)