2004 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける悪道巡歴・救済イメージの展開と相互影響に関する研究
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15720020
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
鷹巣 純 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (00252205)
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Keywords | 仏教絵画 / 六道絵 / 水陸画 / 他界観 / 図像学 / 東アジア絵画 / 説話画 / 中世絵画 |
Research Abstract |
本年度に掲げた2点の重点目標は、そのいずれもがほぼ達成された。概略は以下のとおりである。 重点目標の第1である他界を主題の一部として含む絵画における他界巡歴の様態を分析するための重要作品の調査については、特に2点の重要な進展を示すことができる。その第1は、今年度急遽三重県史編纂室の協力を得ることができるようになり、同県内のほぼすべての熊野観心十界図を調査できたことである。これは全国に残存する同主題作品40点強のおよそ4分の1に相当し、非常に大きな資料蓄積となった。同時に熊野比丘尼関連資料の収集もできたことは、近世における他界観の実態を理解するうえで解釈に深みをもたらすことになるだろう。第2は、中世末期の代表的六道十王図である出光美術館本六道十王図と伝来を一にする涅槃図の調査を行ない、これが六道十王図と一具のものであることを確認しえたことである。他界観を表現した絵画が他の主題の絵画と一具のものとして制作されることはしばしば確認されるところだが、今回の確認は使用されていた環境がかなり明確な作例であるだけに、複数の主題の絵画が複合的に使用されての他界観表現の実態を理解するうえで示唆に富むものになるはずである。 重点目標の第2である、先年度に引き続いての関連文献の収集は、特に中国の仏教絵画に関する文献収集に成果が大きかった。また、日本の他界観を理解するうえできわめて重要な作品群のひとつであるところの北野天神縁起とその周辺の資料についても充実させることができた。北野天神縁起関連の作品は数量的に膨大であり、これを中心主題にすえた研究プロジェクトでない限り網羅的な実地調査は難しいだけに、二次資料の充実は大きい。調査費や図書費が予想外に膨らんだため補助要員を雇用する余裕はなかったものの、作品図版のデジタル化作業もかなり進展した。
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Research Products
(2 results)