2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720025
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
江村 知子 早稲田大学, 文学部, 助手 (20350382)
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Keywords | 美術史 / 日本近世美術史 |
Research Abstract |
江戸時代の画家、尾形光琳の芸術性を解明する上で参考になるのが、本研究で扱う小西家旧蔵光琳関係資料である。本資料には絵巻の模写、屏風下絵、写生や習作、工芸品の下絵など各種含まれている。ごく小さな図様であっても、また逆に絵巻のように画面の連続するものも便宜上一図としたため、単純に数が全体のボリュームを正確に示すものではないが、大阪市立美術館と京都国立博物館に分蔵されている画稿は全体で325件530図ある。今年度はそれらのほぼ全てについて写真撮影・画像収集を完了した。 調査方法としては、大阪市立美術館所蔵分(画帖2帖、掛幅4幅、巻子9巻の15件87図)については自ら写真撮影、熟覧調査を行い、京都国立博物館所蔵分(古絵巻の模写・写生図巻を含む巻子8巻、屏風下絵など掛幅5件8幅、画稿類298枚の310件443図)については同館による撮影に立ち会い、実見しその後写真を収集した。今年度前半より、購入機材によって各図のデータ入力を行い、基礎的なデータ整備はほぼ完了した。現在は調査によって得た画像を取り込みデータベースの構築に取り組んでいるが、来年度前半にはその大概を完成する予定でいる。 今年度の悉皆調査を経て、これまで「大画家」光琳と言われてきたが、その末裔に伝来した画稿類に占める工芸作品に関するもの-印籠・重箱などの蒔絵下絵や染織関連と思われる型紙などがひじょうに多いことを改めて認識し、またこれまで「(本画の)下絵」として等閑視されてきたものの中にも工芸関連と思われるものが少なからずあることがわかった。どういう用途で制作・利用したのか不明なもの、また光琳その人の筆によるものとしてはやや疑問が残るものも含まれているため、慎重な検討・判断が求められるが、来年度以降、絵画と工芸、また光琳の作品として現存しているものと本資料との比較を通じて光琳の芸術活動を明らかにする端緒としたい。
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