2004 Fiscal Year Annual Research Report
室町・桃山期小袖型服飾各類にみる衣材・染織技術・服飾観の相関性に関する研究
Project/Area Number |
15720028
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
澤田 和人 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助手 (80353374)
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Keywords | 服飾史 / 染織史 / 中世史 / 小袖 / 帷子 / 辻が花 |
Research Abstract |
本研究は、従来「小袖類」として一括して議論される傾向にある小袖・袷・単物・帷子など、小袖を典型として類似する外形を備えた服飾群、すなわち小袖型服飾を個別に細分して扱い、歴史的変遷を視野に入れつつ、室町・桃山期における基礎的な美的特質を服飾ごとに抽出することを目的としている。 室町・桃山時代の記録日記類や文書など、同時代の文献資料を可能な限り猟渉し、小袖型服飾各類の記事を拾い出し、それらの色彩および装飾や材質についてのデータを集積した。また、染織品の現存遺例の調査や、画中服飾資料として服飾を描いた絵画の調査を行い、染織技術や服飾に関するデータの集積を行った。 文献資料から得られたデータに分析を加えた結果、小袖・袷・単物と帷子・湯帷子との間では、およそ15世紀まででは画然とした相違があったが、16世紀に入って特に中頃を過ぎると、その相違が少なくなり、更に17世紀以降になると、ほとんど同化する道を辿ることが判明した。 材質の面では、当初、小袖・袷・単物は絹物として、帷子・湯帷子は布物として区別されていたのが、やがて交差してそうした区別が不明瞭になっていくこととなる。 染色技術についても、はじめは、小袖・袷・単物は絞染、帷子・湯帷子は糊防染が多かったのが、材質面での区別が不明瞭になっていくことに伴い、そうした相違が解消される方向へと進むことが浮かび上がってきた。 同時に、小袖のみ、もしくは、.帷子のみにしか見られない染色の名称があることも判り、この点については、『紫明』16号(2005.3)で中間報告を行った。 本年度は、材質との関係が大きな問題となる例である「辻が花」について、美術史学会全国大会に於いて口頭で発表した。そこでは、今日「辻が花」と呼ぶところの室町時代から桃山時代頃の絞りを主体にした模様染の遺品は、第一に材質の点から、文献に見える「辻が花」には相当しないことを論じた。
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Research Products
(1 results)