2003 Fiscal Year Annual Research Report
延慶本『平家物語』における音楽関係記事の総合的研究
Project/Area Number |
15720032
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
久保 勇 千葉大学, 大学院・社会文化科学研究科, 助手 (10323437)
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Keywords | 延慶本 / 平家物語 / 声明 / 金沢文庫 / 延喜聖代 / 将門 / 管絃 |
Research Abstract |
平成15年度 本年度においては、延慶本『平家物語』の成立をめぐる問題に関わって成立時期と環境についての基礎的研究、および当初の予定通り音楽関係記事の考察に関わる資料収集をおこなっている。 軍記・語り物研究会第356回例会において「読み本系『平家物語』における平将門-延慶本を中心に」と題する口頭発表をおこなった。音楽関係記事と直接的に繋がらないテーマのように見えるが、「将門の乱」以前、音楽を含んで文化的に理想的規範とされる延喜の御代から対照化される視点は、『平家物語』が成立する時代に参照される構造にあると思われる。(屋代本抜書「将門序」)本発表では延喜聖代の音楽関係記事に言及しなかったが、延慶本に限らず、軍記物語が音楽記事を採るにあたっては「治世」観という視点を認めることが出来る。そうした構造を見出す準備段階として『将門記』と『平家物語』の関係性について論じた次第である。 論文としては「延慶本『平家物語』の成立をめぐる宗派性の問題-<禅宗>覚書-」を発表している。これも直接的に音楽記事への言及はないが、成立環境(寺院のネットワーク)の問題を<禅宗>を手がかりに考察したもので、<禅宗>に関わる記事の淵源に、金沢称名寺に現存する『禅苑清規』『見性成仏論』が見いだせる点、臨済宗法燈派(後の尺八虚無僧の普化宗総本山)などが浮上する点など、現存延慶本の最終成立期本文に、14世紀前後の宗教的時代状況の反映を見通したものである。今後は、金沢文庫に伝来する声明・管絃等の音楽関係を含めた調査によって、本年度見通した成立圏の周辺に延慶本の音楽関係記事が位置づけうるか、検討していく予定である。また、本年度に予定していたこれまでの延慶本『平家物語』における音楽記事一覧等の成果は、現在準備中のホームページに今夏には公開する予定である。
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Research Products
(1 results)