2003 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス王政復古期文学と都市民衆文化の関係に関する研究
Project/Area Number |
15720047
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
大西 洋一 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (10250656)
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Keywords | 同性愛 / 男性性 / 女性化 / 王政復古期文学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、イギリス王政復古期文学と都市民衆文化の諸相、特にこれまで等閑視されてきた人々の文化との関係を再考することにより、この時期の文学の読み直しを試みることであり、今年度は「同性愛」との関係を中心に考察した。近年のクイア・スタディーズの隆盛に伴い、当該時期の文学・文化研究においても「同性愛」は様々な視点から研究が進められている。「ホモソーシャルな欲望」という概念を援用し、異性愛の男性による支配体制と「女性嫌悪」/「同性愛恐怖」のメカニズムを一貫して説明する理論的枠組みを提供したEve Kosofsky sedgwick、17世紀末頃からロンドンに成立した同性愛サブカルチャーを歴史的に検討し、近代的な「同性愛者」アイデンティティの形成を跡付けるAlan Bray、Randolph Trumbach、Rictor Norton、そしてこれらの研究成果を背景として、主に文学テクストにおける「同性愛」の表象を分析するPaul Hammond、Cameron McFarlaneらの研究がその代表的なものである。本年度の研究では、まずは上記の先行研究等を活用して、王政復古期そして18世紀のイギリス文学における「同性愛」言説を渉猟した。「同性愛」の表象は、当時のジェンダーとセクシャリティをめぐる広範な文化の政治学において、象徴的な侵犯行為として諷刺の文脈で頻繁に現れ、多様な含意を持って機能している。それはまた、Lawrence E.KleinやPhilip Carterらが指摘する、同時期に活発となる「男性性」の再定義をめぐる言説(新しい時代の「徳」として「洗練さ(politeness)」を身につけた男性の「女々しさ(effeminacy)」批判等)とも密接に関連している。次年度は、従来の「男性性」を逸脱する傾向を持つ他の男性像(たとえば、王政復古期演劇における「放蕩者(rake)」や「洒落者(fop)」などの登場人物)などとの比較も考慮に入れながら、より具体的に「同性愛」に関連する文学表象を検討する予定である。
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