2004 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀英語圏文学および諸芸術における抒情表象の変容とその日本への影響
Project/Area Number |
15720051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 公彦 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (30242077)
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Keywords | 英文学 / 日本文学 / 英語 / 即興 / 芸術 / メランコリー / スポーツ / 舞台芸術 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度にひきつづき英国ロンドンにおいて現地調査を行った。おもな資料収集地はBritish Library、Royal Holloway CollegeおよびSaatchi Galleryなど。またこれに先立ち米国Hartfordにおいて学会報告も行った。 昨年来「即興」の問題に関して考察をつづけてきたが、本年度はそのひとつの成果として単著『即興文学のつくり方』を出版した。内容としては、文学に限らず、スポーツ、絵画、舞台芸術などの諸分野における受容や創作プロセスを検証し、いかに「即興」という理念がそこに関わってくるかを具体例をあげながら考察したものである。第一章では野球やサッカーのおける「部分」と「全体」の問題をあつかい、第二章では研究者がみずから参加した「連詩」のセッションにおけるある出来事を検証、その後の章ではエリオット、ワイルド、村上春樹、ウイリアム・カルロス・ウイリアムズ、W・H・オーデンといった個別作家詩人をとりあげつつ、広く即興という問題の持っている文化的な意義を議論している。 この問題の派生として、文学や諸芸術における「スローモーション」の問題に関しての考察もはじめたところである。これは文化と「ゆっくり」がどのようにむすびついているかを、精密な作品分析を通して明らかにしようとするもので、たとえばスポーツにおける準備運動の問題や、舞台芸術、とくにモダンダンスや舞踏における出だしの「ゆっくり」の効果などを検討することが必要となる。創作プロセスでどのように「ゆっくり」の詩学が働いているかは、ひいては受容者の期待値として「ゆっくり」がどのような意味を持っているかともからんでくる。 こうした問題系も、究極的には研究者が問題意識として持ち続けている「メランコリー」や「ヒステリー」といったテーマとあらためてむすびつけられる予定である。
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Research Products
(2 results)