2003 Fiscal Year Annual Research Report
初期啓蒙主義詩学を創発するパラタイム―ドイツ詩学の位置価と模倣説の体系構築―
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15720057
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 覚 大阪大学, 言語文化部, 助教授 (40252407)
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Keywords | ドイツ詩学史 / 啓蒙主義 / 模倣説 |
Research Abstract |
初年度の予定を変更して、研究計画調書に掲げた2年目の内容を中心に研究した。 1.従来の詩学史記述の核であった模倣と想像は、相補的な関係にあるのではないか。ただし、概念の内包に揺れがあったり、用語法が現代とは異なる面があり、言葉は明確に表れていない理論範型を捉え直す必要がある。当時の合理主義哲学は、知覚未端に精神と身体の継ぎ目を想定する。不在の事物の想像は記憶に近い意味で考えられている。しかしそれだけでなく、類似の知覚を基礎とした推論活動において働く想像力なども想定されている。詩学では、素材である対象を模倣するのではなく、対象を超越した関連を模倣するという文脈で想像が問題にされる。さらに、形而上学が精神の本質を表象能力から説明する場面で心身問題が立ち現れる。 2.精神の病を蒸気説や体液説に関連づけて理解する思考法、それと並行した催眠の実践からも、心身関係の理論的範型が抽出できる。催眠によってもたらされる幻覚には、想像の問題に触れる面がある。こうした精神医学での議論はま、一部で合理主義哲学の議論と融合を見せている。今年度、エルンスト・アントン・ニコライの想像力論を中心に、精神医学とヴォルフ学派の哲学との関係を考察した。 3.古典的精神分析の抑圧理論のように、観念連合の阻止を精神にとって好ましくない事態と捉える見方は、初期啓蒙主義にも見られる。そこでは、観念が自由に展開することから快の感情が生じると考えられている。この問題を突き詰めると、精神分析の力動的な精神モデルに対して、観念の複合性を高めるなかで合理性を増していくという初期啓蒙主義の精神モデルが比較項として対置できる。
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