2003 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア演劇におけるアヴァンギャルド・パラダイムの総合的研究
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15720058
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
楯岡 求美 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (60324894)
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Keywords | ロシア / アヴァンギャルド / 演劇 / 戯曲・演出センター / ペテルブルグ / モスクワ / ドイツ現代演劇 / カザンツェフ |
Research Abstract |
本年度はロシア・アヴァンギャルド揺籃の地、ペテルブルグについての考察を中心にパラダイム考察の土台構築を行った。2003年5月23日北大スラブ研究センターにおいて、また2004年1月14日神戸大学国際文化学部において「文化都市ペテルブルグの劇的特性について」と題し発表を行った2003年11月1日にはペテルブルグ建都300年を記念した日本ロシア文学会のシンポジウム「若き人工都市サンクト・ペテルブルグはいかにして学術・文化情報の発信地となりえたか」に参加、演劇を含め、ペテルブルグのアヴァンギャルド性とロシア文化における特異な位置付けについてコメントを行った。 2003年8月大阪の芸術メッセにおいて「モスクワの芸術創造の現状と展望」と題し、発表を行った。現在、モスクワは石油好況を背景に社会が安定し、多彩な芸術運動が活発化している。なかでも演劇におけるアヴァンギャルド系小劇場の活躍はめざましく、国家管理型社会主義体制の崩壊後、社会混乱を乗り越え、ロシア・アヴァンギャルドの伝統が自覚的に再生され、新たな展開をみせようとしている。その意味でも、当研究は予想以上にロシア文化の現況にアクチュアルな問題設定であることが明らかになりつつある。実地には、2004年2月10日〜25日にロシア・モスクワの劇場事情を調査した。特に「戯曲・演出センター」において上演演目の記録を行い、若手演劇人を中心とした新しい演劇潮流を調査した。当劇団では、新たな演劇表現を戯曲・演出・演技の各方面から実験的に取り組み、心理主義的なロシア演劇の伝統に新たな可能性を開こうとしている。アングラ芸術にありがちな一方的な発散型表現ではなく、アヴァンギャルドを批判的に再評価・再構築し、新たな指標を生み出そうとしているところに新しさがある。特に現代ドイツ演劇から戯曲および様式を学ぶ傾向が見受けられることについて劇団を主催するカザンツェフ氏と議論を重ねた。帰路、フランクフルトにおいても劇場に関する情報を収集し、ドイツにおける調査の手がかりとしたいと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 楯岡 求美: "劇的空間としてのサンクト・ペテルブルグ-目で見る都市散歩"しゃりばり. 12月号. 48-53 (2003)
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[Publications] 楯岡 求美: "メイエルホリドの演劇性-チェーホフ、コメディア・デラルテとの出会い"講座 文学5 演劇とパフォーマンス(岩波書店). 5. 145-165 (2004)
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[Publications] 楯岡 求美: "『かもめ』の新しさ"第84回神劇まわり舞台 劇団どろプロデュース『かもめ』公演パンフレット. 3-5 (2003)