2004 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア演劇におけるアヴァンギャルド・パラダイムの総合的研究
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15720058
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
楯岡 求美 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (60324894)
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Keywords | ロシア / アヴァンギャルド演劇 / ポストモダン / メイエルホリド / アナトリー・ヴァシリエフ / チェーホフ / 戦争と演劇 / ナショナリズム |
Research Abstract |
自然主義的、心理主義的リアリズム演劇の祖とされながら、実はアヴァンギャルド演劇の手法を生み出す土台となった劇作家チェーホフに注目し、彼の劇構造が有する、世界システムのモデル化するような特徴こそが、文化や歴史の違いを超えて普遍的な演劇作品として世界中で受容されている原因であることを明らかにし、とくに1世紀という時間を経た現在においても、日・露・韓をはじめとして各国で上演されている現状に注目し、それぞれの作品を比較・考察した。具体的にはユーラシア協会大阪府連国際チェーホフ没後100年記念シンポジウム「チェーホフと現代」(2004.5.8.)では日本の劇作家別役実とロシアの演出家ポグレヴニチコを招き、ポスト・ベケット時代のチェーホフの新しい読みについて、論じた。また、チェーホフ没後100年記念国際シンポジウム「21世紀のチェーホフ」(2004.9.24.)をコーディネートし、ロシア演劇の強い影響下、活動を続ける韓国の劇団の上演をふまえ、多和田葉子など、多文化の中にチェーホフを読み直す可能性について、論じた。 現代ロシアにおけるアヴァンギャルド演劇の継承例として、アナトリー・ヴァシリエフの『オネーギン』をとりあげ、古典文学・芸術のテクストを素材とするポストモダニズム手法の展開を論じた。 ロシア・アヴァンギャルドは、芸術によって世界・政治を変えようとした運動ながら、20世紀的普遍主義のパラダイムに純化するあまり、ソ連において全体主義の確立に加担したことは否めない。しかしながら、常に革新を求めるディシプリンにより、独裁制とは対立し、抑圧、粛清されていく。同時に第二次大戦に対する国民に祖国防衛を呼びかけ、当時の政策を正当化する宣伝の役割を演劇は担っていった。ロシア文学会では「大祖国戦争と演劇における祖国防衛のテーマ-アレクサンドル・コルネイチュク作『前線』」と題し、ナショナリズムと演劇の関わりを論じた(2004.10.2.)。 現代における演劇のもつ意味を検討する観点から、日本国際文化学会では「多文化共生と文化政策」と題する共通論題で、言語・伝統芸能など文化の伝承と多文化社会について考察を行った(2004.7.4.)。
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Research Products
(1 results)