2003 Fiscal Year Annual Research Report
1800年前後のドイツの庭園文化における身体性に関する研究
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15720059
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
濱中 春 島根大学, 法文学部, 助教授 (00294356)
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Keywords | 1800年 / ドイツ / 庭園 / 身体性 |
Research Abstract |
今年度は1800年前後のドイツの庭園の理論と記述における感覚と身体にかかわる言説について考察した。庭園の記述においては、視覚にかんする語彙や表現の豊かさに比べて、他の感覚にかかわる表現はトポスの枠内に限られ数も少ない。ヒルシュフェルトなどの庭園の理論においても視覚が最も重要な感覚とされている。その背景には、視覚の優位という啓蒙主義時代の一般的な事情のほかに、庭園を独自の芸術ジャンルとして認定しようという要求がある。庭園を独立した芸術ジャンルであることを主張するために、しばしばすでに確立していた芸術ジャンルとの共通点が持ち出され、最もよく比較の対象とされた風景画と庭園との共通点として視覚性が強調されることになった。しかし庭園の独自性を示し、諸芸術のヒエラルキーの中で高い位置につけるためには、風景画との相違点もまた見出されなければならない。その結果、庭園は複難の視点から経験可能であること、そして仮象ではなく現実の自然から成ることが指摘され、庭園は視覚だけではなく他のさまざまな感覚によっても経験されること、そして全身体が存在する空間であることを認めざるを得ないという逆説的な事態が生じた。ざらにボンシュテッテンの庭園論において庭園経験における視覚の優位は明確に批判され、庭園は「全人」によって経験されるものであるという人間学的な庭園観が示された。ボンシュテッテンはまた、庭園における健康という要素を重視しており、これは十九世紀に発展する公園の構想にひきつがれる。ただし、公園においては公衆衛生という意味での公的ば健康の推進が対象となるのに対して、ボンシュテッテンの庭園論において問題となっているのは、養生という意味での私的な健康であるという点に違いがある。
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Research Products
(1 results)