2003 Fiscal Year Annual Research Report
通時的変化を反映した共示的音韻現象に関する日露対照言語学的研究
Project/Area Number |
15720087
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安藤 智子 富山大学, 人文学部, 講師 (00345547)
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Keywords | ロシア語 / 声調 / アクセント / 最適性理論 |
Research Abstract |
研究課題である日本語・ロシア語両言語の音韻現象のうち、今年度の当初の計画ではまず日本語に関する資料を収集・分析することであったが、研究協力者の都合等により、今年度の主な分析対象はロシア語とした。日本語に関する分析は来年度に行うこととし、ロシア語に関しても引き続き資料を収集するが、今年度中の研究の成果は次のとおりである。 現代ロシア語の名詞における語強勢の位置が決定される仕組みに関して、さまざまな語構成を持つ名詞を対象に最適性理論の枠組みで分析を行った。名古屋大学などで語構成・語強勢位置と音韻の通時的変化に関する先行研究を収集し、比較分析したほか、ネイティヴスピーカーの語強勢位置に関する直感についても検討した。その結果、ロシア語に関して次のことが明らかになった。 1 単純語根を持つ名詞の多くが持つ強勢の位置はかつての声調に由来し、その位置の決定の仕組みは、日本語鹿児島方言などの声調言語の複合語に見られる仕組みと類似のものである。 2 上記1の原則を逸脱した語は、数のカテゴリーの内部での均質性・数のカテゴリー間の分極性・同じ音素列からなる語形の間での弁別性を持とうとする変化の指向が見られる。 3 複合語では形態素境界が声調特性よりも優先的に強勢位置の決定に関与する。 4 派生語尾では声調的な特性を持つものとアクセント的な特性を持つものとがある。 5 借用形態素が持つ韻律特性は、声調ではなく狭義のアクセントと考えられる。 6 各形態素に指定される特性が声調からアクセントへと変化するとともに、実際の語形の持つ韻律的特性を決定する文法が、アクセント言語のそれへと変化してきている。 なお、今年度の研究の成果は、報告者の学位申請論文(課程博士(文学)、名古屋大学、平成16年3月提出済)「ロシア語の韻律的特性に関する研究」に反映された。
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