2004 Fiscal Year Annual Research Report
英語史における動詞第二位現象の消失に関する実証的・理論的研究
Project/Area Number |
15720111
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
縄田 裕幸 島根大学, 教育学部, 助教授 (00325036)
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Keywords | 豊かな一致の仮説 / 動詞移動 / 言語変化 / 機能範疇 / 中英語 / 音韻部門 / インターフェイス / 動詞第二位現象 |
Research Abstract |
生成文法理論において,顕在的動詞移動の可能性が動詞の屈折接辞の豊富さに依存するという「豊かな一致の仮説」が注目を集めている。動詞が屈折辞に繰り上がる移動,すなわちV-to-I移動に関しては通言語的観点から様々な調査が行われ,この仮説の妥当性がかなりの程度明らかになってきていたが,ゲルマン系の言語で観察される動詞第二位(V2)現象が「豊かな一致の仮説」で扱えるかどうかに関しては未だ明確な結論が出ていなかった。そこで本研究では,歴史上V2現象の消失を経験した英語において,それが動詞屈折接辞の衰退からどのような影響を受けていたのかを調査し,「豊かな一致の仮説」をV2現象へ応用する可能性を探った。本研究の結果,これまで「V2移動」として一括りにされていた現象が,実は異なる原因によって引き起こされる複数の統語操作へと分解されることが明らかになった。具体的な成果として,以下の3点の解明が挙げられる。1.いわゆる「V2移動」には,機能範疇Cを標的とするものと,それよりも下位の機能範疇Agrを標的とするものがある。これにより,中英語におけるV2の方言差ならびに通言語的差異が説明される。2.C位置への動詞移動は統語部門で生じ,Agrへの移動は音韻部門で生じる。このことは,Cへの移動とは異なって,Agrへの移動が随意的であり,なおかつ動詞屈折の豊かさによって影響を受けていることから裏付けられる。3.「豊かな一致の仮説」の一般化は,屈折接辞の音声化に課せされる早期原理によって導かれる。これは,接辞の音声化に必要な情報が句構造に揃った段階で,ただちに音韻素性を付与することを要求するものである。これらの成果は,統語部門と音韻部門のインターフェイスに関するさらなる研究へとつながっていくことが期待される。
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Research Products
(3 results)