2003 Fiscal Year Annual Research Report
日本人学生の短期語学留学の成果と課題―カナダの語学学校での調査―
Project/Area Number |
15720136
|
Research Institution | Yonezawa women's junior college |
Principal Investigator |
小林 葉子 山形県立米沢女子短期大学, 英語英文学科, 助教授 (00352534)
|
Keywords | 語学留学 / 第二言語としての英語 / 日本人留学生 / 交友関係 / 日本人カウンセラー / 教育と営業 / ポスト構造主義 / 質的データ |
Research Abstract |
カナダの語学産業は40億ドル市場であり、英語学習目的に留学する留学生の数は10万人近くに及ぶがその中で韓国、日本、そして中国からの留学生が大多数を占めている。英語圏のみならず語学留学は一大ビジネスであるが第二言語習得学領域では語学学校に留学している学生同士の交友関係について焦点を当てた研究の蓄積が乏しく、韓国や日本などアジアからの留学生の間に見られる集団主義的や消極性を「アジア系学生の特徴」と概念化する傾向が根強い。2003年度に実施したカナダでの調査目的は日本人語学留学生の行動パターンを日本人学生特有のものとして概念化することではなく、ポスト構造主義の観点から傾向の程度とその社会的背景を分析することであった。今回の調査で収集・分析した質的データは現地で収集した文献、カナダ人責任者1名と日本人カウンセラー2名に行った自由インタビューデータ、さらに別の日本人カウンセラー6名から得られた半構造的アンケート調査のデータである。調査の結果、日本人留学生の間に集団性と消極性の傾向が見られたがその背景として(1)語学留学の大衆化に伴う留学目的の曖昧化、(2)その曖昧さ故に日本人同士のつきあいに流されてしまう主体性の欠如、(3)営利団体としての語学学校の性質とその取り組みの限界、があることが明らかとなった。 ボクナーの友人機能モデルが提唱するように同国出身者同士の交流は精神的支えとなり否定されるべきものではない。しかし語学上達を目的とする留学生を対象に教育を提供することが前提となっている語学学校にとっても留学生自身にとっても排他的に同国出身者と第一言語で交流することは異文化間交流・語学上達両面において問題である。異文化間教育と第二言語教育という二分野の観点から今後の研究課題について提言を行った。
|
Research Products
(1 results)