2003 Fiscal Year Annual Research Report
大陸祭祀を起源とする各種古代禊祓儀礼の導入と変遷について
Project/Area Number |
15720150
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉川 美春 金沢工業大学, 工学部, 講師 (30291884)
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Keywords | 上巳祓 / 曲水宴 / 禊祓儀礼 / 三月三日 / 賦詩 / 節日 / 三月上巳 |
Research Abstract |
わが国で「節日」とされているものを中心にとりあげ、平成15年度は、三月上巳及び九月九日重陽を中心に研究を進めた。 律令体制下のわが国では、三月三日を節日に規定しており、賦詩を楽しむ節宴を催すことが多かった。それらの節宴は曲水宴など大陸伝来の形式をうかがわせ、華やかで文化的な行事として貴族社会で盛行していた。だが、この行事は、本来三月上巳日に催されるものであり、大陸での原形は禊祓が中心であったと見られる。これが、魏朝に三月三日に規定されるようになり、徐々に詩宴を催すなどの文化的な性質が強くなっていく。そうした大陸での状況を見聞したと思われる遣隋使・遣唐使を通じて、その影響を受けたわが国では、三月三日に詩宴を催す文化的な行事として受け入れられたと考えられる。 事実、飛鳥・奈良時代以降、平安時代の初期までは、賦詩を中心とした曲水宴の記事が多く、元来の禊祓儀礼を示す内容の記録がほとんど見られない。しかしながら、摂関時代頃から三月上巳日を意識した禊祓儀礼が貴族社会で実施され始めており、それらの事例が古記録上に散見される。更に、中世以降は盛んに三月上巳日及び三日に祓が行なわれている様子もうかがえる。 これらのことから、わが国では三月上巳の儀礼が、朝儀としての導入当初は表面的な文化的節宴として扱われ、徐々に元来の意味を意識した禊祓を組み込んで行ったのではないかと考えた。そこで、三月三日に実施された曲水宴などの儀礼の変遷や、徐々に史料上に現れだした「上巳祓」の変遷について、時代ごとの大陸からの影響と照らし合わせて、その流れを明らかにした。 一方、九月九日重陽節については、主にその停廃と復興時期について、先行研究を踏まえて進めた。天武天皇崩御後、約120年間の停止期間があったと考えられるが、その間に復興・停廃が繰り返されたとする先行説を修正することができた。詳細は次年度に持ち越すこととなった。
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Research Products
(1 results)