2003 Fiscal Year Annual Research Report
近世長崎旧記類の系統分類と長崎から見た異文化認識の解明についての研究
Project/Area Number |
15720152
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
位田 絵美 北九州工業高等専門学校, 総合科学科, 講師 (30353345)
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Keywords | 長崎旧記類 / 英雄像 / 対外認識 / 日本人像 / 近世 |
Research Abstract |
今年度は本研究を進めるにあたり必要不可欠な「長崎旧記類」の資料調査・収集と内容分析を下記(1)〜(3)のように行なった。この成果の一部は、H16年4月発表の『文学研究』第92号に発表し、また同年6月に立教大学日本学研究所にて研究報告を行なう予定である(発表申請は受理されている)。 (1)「長崎旧記類」は全国の図書館・資料館に散見されるが、今年度は国立国会図書館・同関西館をはじめ、独立行政法人内閣文庫・愛知県西尾市立図書館岩瀬文庫・長崎県立長崎図書館・長崎市歴史民俗資料館・平戸市切支丹資料館・松浦史料博物館・さかきばら郷士史料館・沖縄県立博物館など全国16ヶ所を延べ36回にわたって調査し、資料収集、フィールドワークに努めた。 (2)(1)で収集した史料の書誌を取り、筆書写された年代の推定を大まかに行いながら、内容を分析した。その際、主要と思われる「長崎旧記類」を翻刻し、パソコンへの入力作業を行なった。この翻刻作業は今後も継続して行なう予定である。 (3)(1)(2)の作業を通じて近世「長崎旧記類」には、従来の日本の英雄像にはない独自の英雄像が見られることがわかった。その特質は以下の3点である。 (1)「長崎旧記類」筆書写と同時代に海外で活躍し、日本の名を高めた存在である。 (2)従来の英雄像に共通して見られるような悲劇性がない。 (3)従来の英雄像に共通して見られるような貴種流離譚の傾向がなく、民衆の中から生まれた身近な存在である。 今後は「長崎旧記類」の翻刻作業を進めてさらなる内容分析を行ない、推定筆書写年をもとに「長崎旧記類」の系統分類を行いたい。また上記(3)であげた江戸時代独自の英雄像をもとに、当時の大衆が理想とした日本人像や彼らの対外認識を分析し、それが現代のわれわれの認識とどう結びついていくのかを考察したいと考えている。
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Research Products
(1 results)