2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15720154
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
古市 晃 財団法人大阪市文化財協会, 学芸部・学芸課, 学芸員 (00344375)
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Keywords | 統合論理 / 統合儀礼 / 統合中枢 / 倭王権 |
Research Abstract |
研究の初年度として、七世紀倭王権の支配者集団統合儀礼の研究を進化させる上で必要な基礎的図書・備品を購入し、既存図書とあわせてデータの収集に努めた。また、研究を深化させる上で必要な国内の古代寺院遺跡、官衙遺跡等の出張調査を行った。 その他、2003年7月には、「四月・七月斎会の構造-七世紀倭王権の統合論理と仏教-」と題して、研究報告を行った(八・九世紀研究会)他、2004年3月には東アジア王権儀礼研究会に参加し、情報収集・意見交換に努めた。 これまでの研究を通じて、七世紀倭王権段階の支配者集団統合儀礼の中核に位置するのが、四月八日の仏誕会、七月一五日の盂蘭盆会という仏教儀礼と、元日朝賀儀礼であるという見通しを得た。仏教儀礼が統合儀礼の中核に位置するという存在形態は、祖先祭祀が中核となる中国・南北朝時代、朝鮮・三国時代の統合儀礼とはかなり異質であるが、倭の場合、仏教を媒介として支配者集団が君主に対する奉仕を誓願するという論理を作り上げることにより、前代までのウヂを単位とする個別的・分断的な統合の段階を止揚することができたと考えられる。このような論理を顕示するための統合中枢として、王宮と寺院が一対の関係で機能したことを検討した。このように、七世紀倭王権の統合論理は、きわめて仏教色の強いものであったと考えられるが、それを列島諸地域に波及させる手段として、伽藍を持つ寺院の他、官衙的施設に附属する仏堂、銅鋺や香炉といった携帯可能な仏具を持った僧尼による仏事の執行など、多様な方法があり得たのではないかと考えた。
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