2003 Fiscal Year Annual Research Report
清末民国期江南市鎮の指導層と地域統合に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15720160
|
Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
佐藤 仁史 滋賀大学, 教育学部, 講師 (60335156)
|
Keywords | 清末民初 / 江南 / 地方エリート / 地方自治 / 平民教育 |
Research Abstract |
平成15年度の研究活動及び実績は次の通りである。9月7日より21日まで中国上海市および江蘇省南京市、蘇州市の各所蔵機関において史料収集を行った結果、蘇州市については『蘇州明報』『蘇州晨報』、呉江市については『新盛澤』『新黎里』『盛澤』『盛〓』『呉江報』(一部)、常熟市については『常熟青年日報』『新常熟報』『常熟日日報』(一部)『常熟市郷報』(一部)といった地方新聞を、マイクロフィルム、複写、撮影の方法によって入手した。また、当該地域の文史資料や新編地方志(県志、郷鎮志)を収集し、1920年代における市鎮の指導層と地域統合に関する情報を収集した。 従来の研究では殆ど利用されなかったこれらの地方文献の初歩的な整理によって、1920年代の江南における地方自治や平民教育に関する具体的な態様が浮かび上がってきた。史料収集の主要対象となった呉江市、常熟市、蘇州市といった地域では、1920年代に入ると市民公社という独自の自治組織が陸続と設立され、この組織を中心に地方自冶や郷土建設、平民教育に関する運動が活発に推進された。これらの運動の過程や彼らが目指した地域統合の形を検討することの有効性に次の二点が挙げられる。第一点は近年の政治体制論の相対化である。そこでは国民党による党国体制が形成・浸透していく過程として1920年代以降の政治過程をとらえられているが、江南の事例は地域社会の側の要請(非要請)という資格から党国体制論を相対化する必要性を喚起している。第二点は平民教育や民衆教育に関する事例の蓄積である。従来の研究で取り上げられてきた中華平民教育促進会による教育運動とほぼ同時期に、当該地域においても独自の平民教育運動が展開され、また、民衆や民衆文化をどのようにとらえるかについて興味深い議論が展開されている。ここからは教育と地域統合との関連について分析の深化をもたらすことが期待される。
|
Research Products
(2 results)