2004 Fiscal Year Annual Research Report
グレートブリテン・アイルランド連合王国初期における連合主義の分析
Project/Area Number |
15720171
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
勝田 俊輔 岐阜大学, 教育学部, 助教授 (00313180)
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Keywords | 西洋史 / イギリス / アイルランド / 政治 |
Research Abstract |
本研究の課題は、19世紀初期のアイルランド統治における連合主義であるが、今年度は昨年度に続き、プロテスタント市民が行っていたウィリアム3世王の記念祝賀儀礼についての政府の姿勢を分析した。夏期にイギリスおよびアイルランド共和国で史料および文献調査を行った。対象とした主な史料は、Peel Papers(英国図書館)、Wellesley Papers(英国図書館)、およびアイルランドのロイヤル・アイリッシュ・アカデミー所蔵のパンフレット類である。 昨年度に得た知見に加えて、本年度は新たに以下の成果を得た。(1)1820年代の政府は、儀礼がカトリックにとって侮蔑的であるとして、水面下の説得を通じて中止させようとしていた。(2)しかし、カトリックがこの問題を公に取り上げて煽動したためプロテスタントは姿勢を硬直化させ、政府は禁止命令を出すことで儀礼を中止させざるを得なかった。(3)このため、一部のプロテスタントはアイルランド総督に危害を加える挙に出た。(4)この事件の裁判は、プロテスタント強硬派の秘密結社であるオレンジ団が介入したため公正な性格を失った。(5)このため、オレンジ団は議会制定法によって弾圧された。(6)このようにして、18世紀以来アイルランドの最も重要なシンボルであったウィリアム王のシンボルは公的な空間から排除されたが、他方でこれに代わる国民的なシンボルは確立されなかった。(7)政府は、1790年代の革命運動を弾圧する際に大きな功績があったオレンジ団をも弾圧するに至った。 以上、今年度得られた知見をごく簡単に要約すると、19世紀初めの連合王国政府は、一方では自らを超宗派的な存在と規定しつつは、他方で市民的儀礼を禁じ、また保守派として国家機構に影響力を浸透させていたオレンジ団を弾圧してまで、アイルランドにおける宗派間の関係の改善を図ったと言える。 なお、今年度は、以上の知見を、6月のアイルランド史研究会、および10月の関西アイルランド研究会で報告した。来年度は、夏期に史料調査を行い、最終的な研究成果を学術雑誌に投稿する予定である。
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Research Products
(2 results)