2003 Fiscal Year Annual Research Report
東欧共産政権における民族主義ファクターに関する研究:戦後初期ポーランドを中心に
Project/Area Number |
15720177
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
吉岡 潤 津田塾大学, 学芸学部・国際関係学科, 専任講師 (10349243)
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Keywords | ポーランド / 東欧 / ソ連 / 共産党 / 民族主義 / 現代史 |
Research Abstract |
初年度である本年は、3ヵ年にわたる本研究の準備期間として、主に研究史の整理、各種資料の所在調査、および資料の収集に取り組んだ。まず、本研究の大前提となる、ソ連の対東欧政策、とりわけ対ポーランド政策の解明に向けては、ロシアに出張してロシア国立図書館などで関連資料を収集した。また、ロシア出張に引き続きポーランドにも赴き、最新の研究状況を調査し、本研究の位置づけを改めて確認した。その結果、本研究の素材となる各論的な議論は相当な進展と深化を見せていること、一方で本研究が目指すジンテーゼ的な議論は管見ではまだ見当たらないことが判明した。 本研究の具体的な検討課題である、共産主義者と民族主義者と思想的・人脈的相互影響については、共産政権下にあって活発に活動を展開した民族右派のイデオローグの例として、歴史家ズィグムント・ヴォイチェホフスキをとりあげた。ポーランドとドイツの関係を専門とするこの中世史家は、戦後ポーランド国境保全のための学術研究推進を一つの目的としてポーランド西部の町ポズナンに創設された「西方研究所」の所長を務めた人物である。前述のポーランド出張に際しては、彼の著作を戦前期のものも含めて可能なかぎり入手するとともに、西方研究所が発行した書籍、パンフレット、雑誌からも必要と思われる資料を収集した。現在は、これらの資料のうち、ヴォイチェホフスキの戦前期の著作を分析することにより、戦時期から戦後期につながる彼の思想的バックボーンの確認に取り組んでいる。次年度においては、この作業を進展させるとともに、西方研究所の所内資料および政府・党側の資料から、設立当初の研究所と政府・党との関係を探る予定である。
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