2004 Fiscal Year Annual Research Report
東欧共産政権における民族主義ファクターに関する研究:戦後初期ポーランドを中心に
Project/Area Number |
15720177
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Research Institution | Tsuda College |
Principal Investigator |
吉岡 潤 津田塾大学, 学芸学部・国際関係学科, 専任講師 (10349243)
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Keywords | ポーランド / 東欧 / ソ連 / 共産党 / 民族主義 / 現代史 |
Research Abstract |
二年目である本年度は、昨年度から取り組んでいる、本研究の前提としてのソ連の対東欧政策、とりわけ対ポーランド政策についてさらに分析を進めた。その結果、ソ連が第二次大戦中から戦後初期にかけて、各国の民族主義ファクターを含む国内諸条件に配慮した連立政権構想である「国民戦線」戦略を追及していたことが解明された。そして、この戦略を所与のものとしてあてがわれたポーランドの共産主義者が、ポーランドにおける連立政権・複数政党制をどのように運営していったのかをまとめた論文が、2005年4月発行予定の『スラヴ研究』誌に掲載されることになっている。 また、本年度は、研究目的として掲げた具体的な検討課題である、共産主義者と民族主義者と思想的・人脈的相互影響についても、昨年度中に収集した史料の分析を開始した。その際、本研究のいわば主役である歴史家ズィグムント・ヴォイチェホフスキおよび彼が所長を務めた西方研究所に関する資料にあたるとともに、ポーランドに出張した際に、戦後にポーランド共産主義者が抱くにいたった単一民族国家志向に影響を与えたとされる、民族主義的政治家スタニスワフ・グラプスキの戦前から大戦中にかけての著作にもあたった。その結果、ポーランドにおける多民族性の伝統と近代的国民国家原理との間で揺れる両大戦間期のポーランドにおいて、グラプスキが明確に民族国家としてのポーランドを志向し、いわば戦後の姿を先取りした議論を展開していたことが判明した。彼の思想的営みと共産主義者のそれとの交差もまた、ヴォイチェホフスキと共産主義者との接触同様にさらに解明を進めるべき問題であり、次年度の課題となる。
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Research Products
(1 results)