2003 Fiscal Year Annual Research Report
九州における近世過渡期の城郭の縄張り構造に関する研究
Project/Area Number |
15720183
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木島 孝之 九州大学, 大学院・人間環境学研究院, 助手 (20304850)
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Keywords | 城郭 / 戦国期 / 近世 / 益富城塞群 / 秋月氏 / 黒田氏 / 縄張り / 九州 |
Research Abstract |
益富城塞群の遺構調査の進行状況は、雪などの天候不良や想像以上の草木の繁茂に加え、予備踏査段階で確認できなかった新規の遺構の発見によって、今年度予定範囲の8割程度に止まった。それでも対象区域約120万m^2の内の約半分(城塞群の外郭部)の踏査が終了し、該当個所の「縄張り図」(1/1000)の下図を作製した。 踏査の具体的成果としては、予備踏査段階で確認していた外郭部の長城型防塁遺構が、さらに長大なものであること、形態から判断してごく短期間の内に一挙に構築されたものであると考えられること、畝状竪堀群を横堀・土塁とセットで使用する点で北部九州の在地系城郭の中で最高の技術水準にあることを確認した。これによって当初の予見どおり、当遺構が、天正14年の九州平定軍の来襲を前に、秋月氏を盟主とする北部九州国人一揆衆によって構築された可能性が濃厚となった。 また、本踏査と平行して関連城郭の遺構の確認調査を行った。これによって、益富城塞群外郭部の長城型防塁で一ヶ所だけ確認できた食違虎口が、戦国期北部九州地方の中で唯一のものであること、また、これが北部九州の在地系城郭の虎口プランの発展の限界であったとの予見が強まった。 そのほか、全国城郭研究セミナーなどの研究会・報告会にできるだけ積極的に参加し、近年の城郭研究の問題意識や留意点を吸収することに努めた。その中でも、遺跡の年代評価における縄張り研究分野(縄張り構造の分析に基づく年代観)と考古学分野(陶磁器編年に基づく年代観)の間の年代観の隔たりが顕著になりつつある現状や、特に現行の16世紀後期以降の陶磁器編年に傾倒しすぎると危険であると考えられる諸事例に触れたことは、今後の調査・分析を進めるうえで大変参考になった。 以上が本年度の研究状況と成果である。
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