Research Abstract |
本研究は,ボルネオを基点とする開発事業の推進と国際(あるいは越境)労働力移動との関係を解明し,先住民社会におけるその影響について検討することを目的としている。 本年は,マレーシア・サラワク州およびサバ州において現地調査を行った。具体的には,サラワク州では,森林省や個別の木材伐採企業への聞き取りを行い,サバ州においては,1950〜60年代にサラワクからサバへと移住した集落への聞取り調査をおこなった。両地域は,現在では同じマレーシアを構成する州となっているが,1960年代までは異なる植民地体制の下にあり,植民地統治下における国際移動の様相を呈していた。また,こうした移動は,サバにおいてすでに活発に行われていた木材伐採作業や,その他の林産物採取作業の労働者としての出稼ぎが中心であり,現在までおこなわれている出稼ぎとの連関性を考える上で,重要な歴史的背景を持っていることが分かった。 今回調査を行った移住集落は,いずれもすでにサバ州に定着した集落となっているが,母村であるサラワク州の集落とは,同じエスニック集団でありながら,生業活動内容も社会構造も全く異なったものとなっており,比較を行う上でも興味深い対象となった。 一方,本年度は,平成16年度までの調査で得られた成果の一部が学術雑誌に掲載されたほか,別稿を投稿準備中である。また,これ以外にも,マレーシア・サラワク大学・東アジア研究所での特別セミナーや,マレーシア国民大学での国際シンポジウム,北海道大学大学院文学研究科での国際ワークショップなどで口頭による研究成果の発表を行った。
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