2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本の伝統的非鉄金属資源開発に関する歴史地理学的研究-石見銀山地域を中心として-
Project/Area Number |
15720205
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Aeronautical Engineering |
Principal Investigator |
原田 洋一郎 東京都立航空工業高等専門学校, 一般科, 助教授 (90290725)
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Keywords | 歴史地理学 / 鉱山業 / 非鉄金属鉱山 / 石見銀山地域 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に引き続き,史料収集のための現地調査を行った他,年度途中の7月に歴史地理学会大会において,前年度までに得られた成果の報告を行った.その概要は,江戸中後期には幕府直営の「直山」が増加したことに示されるように,銀山の持続的開発のために代官所が積極的な役割を果たしたが,一方で「貸附銀」への対応や物資の供給などにおいて,銀山周辺地域の集落も大きな役割を果たしたというものである.周辺地域の役割の具体的なあり方は,解明すべき重要な課題として残されていた.本年度の調査は,その点について検討しうる史料を収集することを念頭に置きつつ実施したものである. 4月には,茂住銀鉛山・和佐保銅鉛山の経営に重要な役割を果たした岐阜県飛騨市神岡町の柿下家と牛丸家の史料を,神岡町史編纂室において収集した.これらは,石見銀山と同じく幕府領でありながら,代官所よりも民間が主導して行われた同地域の鉱山開発を,石見銀山の事例と比較するための史料である.8月の調査では,島根県邑智郡美郷町潮の中原家文書の収集を,現地において行った.中原家は江戸後期〜明治初期の有力な鉄山経営者のひとりであった.鉄山経営者が,木炭の供給や間接的に銀山経営資金を供給することによって石見銀山の維持に重要な役割を果たしたことは,これまでに明らかにしてきたが,中原家の史料を用いることによって,その具体的なあり方を明らかにすることができると考えている.12月の調査では,島根県大田市大森町の銀山町組頭上野家と大森町の有力商人熊谷家の史料を,石見銀山資料館において収集した.両家の史料は,石見銀山の経営に加え,銀山町の生活の具体相を明らかにすることのできるものである. 以上のように,今年度は,銀山の経営や町や村の運営に関わる有力家についての検討が主となった.一方で,労働者の賃銭稼ぎや生活の実態にまで検討を及ぼすことができなかった.この点が今後のさらなる課題である.
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