2004 Fiscal Year Annual Research Report
複雑訴訟における正義-日米の大規模不法行為訴訟・医療過誤訴訟を素材に、その実体的正義・手続的正義の質と社会的フォーラムとしての機能を問い直す-
Project/Area Number |
15730007
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 千原 立命館大学, 法学部, 助教授 (50309085)
|
Keywords | 専門訴訟 / 医療過誤訴訟 / 手続的正義 / 医療関連死届出制度 |
Research Abstract |
今年度は、主として日本の医療過誤訴訟と、医療事故の届出制度を調査するなかで、複雑訴訟の一種である医療過誤訴訟に求められる正義のあり方について考察を行った。 大阪地方裁判所医事集中部の判事への聞き取り調査および傍聴により、現在の専門訴訟への取り組みの実態調査を行った。集中部では裁判官も医事訴訟に習熟し、証拠提示のビジュアル化、集中証拠調が定着し、かなり効率よく訴訟運営が行われている一方で、被告側代理人の対応が不十分であることや、医療過誤訴訟そのものの増加などにともない、医療側の危機感や訴訟への不満も高まっているようである。また、原告にとっても、事態は改善されているとはいえ、謝罪や再発防止といった訴訟では望みにくい要求が満たされないことや、高度に専門性の高い訴訟からの疎外感といった問題はなお残されている。 そうした医療事故への根本的解決を目指すことを目的として、この1,2年で急速に取り組みがはじまってきたリスクマネジメントへの取り組み、医療関連死届出制度についても調査を行った。これについては2004年12月に「関西フォーラム医療と法」という医療と法の研究者による研究会において研究報告を行った。こうした取り組みと訴訟がいかなる関係で医事紛争に対応していけるかを考察し、そこからさらに訴訟が果たしうる役割について再考し、その成果を現在論文にまとめている最中であり、来年度、研究成果として立命館法学に発表することを予定している。 その考察を深めるべく、日米比較として、アメリカでのリスクマネジメントの取り組み、コロナーおよびメディカルエグザミナー制度、医療過誤訴訟への対応についての文献研究も行っている。 なお、本研究は、研究代表者の産児・育児休業のため研究開始が予定より1年遅れたため、本助成の直接の研究業績とはならないが、その準備段階での研究成果として、アメリカのアスベスト訴訟とそこでの弁護士の公益性についての考察、日本での専門訴訟の対応から、日本の民事訴訟の変容と今後のあり方を考察した論文を今年度公表している。
|
Research Products
(1 results)