2003 Fiscal Year Annual Research Report
不確実な条件下での行政決定に対する法的コントロールの基礎的かつ実態的研究
Project/Area Number |
15730009
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
下山 憲治 福島大学, 行政社会学部, 助教授 (00261719)
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Keywords | 不確実性 / リスク / リスク行政 / リスク管理 / 予防原則 |
Research Abstract |
本年度は,わが国で制定・施行された食品安全基本法及び関連法の改正、ドイツにおける食品安全のための連邦リスク評価研究所及び連邦消費者保護・食品安全庁設置法とそれにかかわる関連法の改正について、資料収集及びドイツでは、研究者を中心としてヒアリング調査も行った。わが国の食品安全基本法がEUの食品安全規則の構造も参考にしていることもあり、EUを含めた法制度の比較研究と、実態分析の必要性を強く感じた。 本年度は、不確実な条件下における行政決定に際し、各種科学分野における専門家などの関与する行政機関としての各種委員会(わが国の場合)やそれとは独立した組織構成をとる研究所(ドイツの場合)がリスク評価やリスクコミュニケーションにあたり、各種規制権限の行使などリスク管理を担当する機関とは異なる組織構成が共通して採用されており、主として、科学的事項の客観性と独立性、透明性と信頼確保の観点から取り入れられたことが確認できた。また、EUの食品安全規則とドイツの前記新組織の設置法の制定過程における議論と現状分析を行った(実績がほとんどないため経年的な研究が必要である)。この点は、すでに2度研究会報告もしており、来年度に論文としてまとめ、公表する予定である。さらに、ドイツでは、連邦環境省と連邦健康保険省が共同して設置したリスク特別委員会の最終報告書も、昨年6月に提出された。その内容についても,食品の安全性の確保・向上に限らず、化学物質等を含めた環境リスクにかかわる基準設定手続や、その手続を進める上で中心的な役割を果たす、リスク評価協議会の設置、団体訴訟を認めることなどを提案しており、注目される内容である。通常のリスク状況に対応する際の基準設定手続と、何らかの被害がすでに発生しているいわゆる「危機」時の管理手続との相違に注意を払いながら、環境リスクにかかわる研究を進めていく必要がある。
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