2004 Fiscal Year Annual Research Report
「法秩序の憲法化」における憲法裁判の役割-独米日の比較憲法学的研究-
Project/Area Number |
15730018
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宍戸 常寿 東京都立大学, 法学部, 助教授 (20292815)
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Keywords | 法秩序の憲法化 / 憲法裁判 / ドイツ連邦憲法裁判所 |
Research Abstract |
今期は、研究代表者が東京大学大学院法学政治学研究科助手採用(1997.4)以来継続してきた、ドイツ憲法裁判権の理論的研究について、ひとまずの完成を見た。具体的には、国家学会雑誌上に発表した「憲法裁判権の研究(六・完)-ドイツ憲法研究ノート」において、法秩序形成における立法者の第一次的役割と、憲法裁判機関の補完的役割を視野に入れて、憲法上の与件に法秩序が接近していくプロセスとして立法・行政・司法の関係を考察する「法秩序の憲法化」という本研究課題の中心的主題についても、まず導入的な紹介を行い、とりわけ「憲法と通常法」の関係についてのドイツの最新の議論状況についても、整理を行ったところである。 また今期は、日本国憲法制定直後に至るまでの、我が国における「憲法裁判権」の受容に関する制度史・学説史研究を進めた。具体的には、東京都立大学法学会雑誌上で発表した「日本憲法史における『憲法裁判権』-「憲法裁判権の動態-ドイツ憲法研究ノート-」補論-」において、大日本帝国憲法下の学説がドイツにおける「裁判官の審査権」論を参照しつつ、(1)認証理論に基づく審査権制限論、(2)帝国議会の地位を重視する立場からの制限論、(3)天皇大権論に基づく肯定論、(4)法の支配に基づく肯定論に学説が分岐していたことを確認した。そして、ドイツの「憲法争訟」に関する議論が、わが国では枢密院制度の形成の際に参照されていたと見るべきこと、またオーストリアの憲法裁判所、ドイツの国事裁判所が、明治憲法下での憲法裁判所論として影響を与えたこと、日本国憲法及び裁判所法の制定過程で、アメリカ型の司法審査制の影響の下、ドイツ流の憲法争訟の観念がわが国の運用及び学説で忘却されるに至ったことを、明らかにした。 なお、本研究課題の直接の実績ではないが、その副産物的成果として、今期は「司法権と裁判所」「憲法訴訟」山内敏弘編『新現代憲法入門』(法律文化社、2004年)324-345頁のほか、憲法裁判に関する判例評釈1件等を執筆した。
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Research Products
(2 results)