2003 Fiscal Year Annual Research Report
グローバリゼーションの進展に伴う「持続可能な開発」概念の位相
Project/Area Number |
15730022
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西村 智朗 三重大学, 人文学部, 助教授 (70283512)
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Keywords | Sustainable Development / 持続可能な開発 / 国際環境法 / ヨハネスブルグ・サミット |
Research Abstract |
本年度は、2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界サミット」での成果をふまえて、国際社会における「持続可能な開発(Sustainable Development)」概念の到達点を検証した。 その結果、同概念の具体化はまだ十分図られていないものの、そこから重要な国際環境法の原則が抽出されていることが明らかになった。具体的には「共通だが差異のある責任」原則や予防アプローチ原則などが、最近の多数国間環境協定の中で結晶化しつつあることを論証した。また従来から同概念に内在されていると考えられていた「非持続的な生産・消費パターンの変革」も同概念を定義する上で重要であることを指摘した。 もっとも国際環境法の基本理念としての「持続可能な開発」概念は、グローバリゼーションの進展の中でその方向性を見失いつつあるという批判もなされている。ヨハネスブルグ会議においても、環境と貿易の関係について先鋭的な対立が見られるなど、東西冷戦崩壊後の国際経済の急速な変化が国際環境法の形成に与える影響について詳細に分析する必要がある。言い換えれば、自由主義市場原理メカニズムが浸透・普遍化する中で、同概念を環境保護と発展促進の統合埋念として一般国際法の中でどのように理解するかについては、今後更なる検討が必要である。 その為には、国際裁判や国家実行などの国際法の実践の中で、持続可能な開発概念がどのように理解されて(場合によっては変遷して)きたかについて、特に既存の経済・貿易レジームにおける同概念の定義について、検証しなければならない。 その上で、環境条約相互の連携・調整のみならず、既存の国際レジームを念頭に入れた上で、現代国際社会が持続可能な発展に関する国際法をどのうよう構築していくべきかについて考察したい。
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Research Products
(1 results)