2003 Fiscal Year Annual Research Report
社会はなぜ「高齢」を支援するのか―アメリカ社会保障制度における高齢者保護の根拠
Project/Area Number |
15730027
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関 ふ佐子 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 助教授 (30344526)
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Keywords | 社会保障法 / 高齢者 / アメリカ / メディケア |
Research Abstract |
本研究は、貧窮や障害といったニーズのみならず、「高齢」、すなわち65歳以上という理由から、高齢者を社会保障の対象とする根拠を探るものである。 本年度は研究の一年目であるため、第一に、研究を基礎づける資料・図書の整理に力を入れた。とりわけ、学際的な研究を行うために、社会保障法のみならず、老年学や法哲学といった各領域において高齢者にかかわる問題を扱った基礎的文献も収集した(研究の基盤となるコンピュータなども整備した)。 第二に、諸外国の最新の知見を正確に把握するために、イギリスとアメリカの現地調査をした。従来イギリスでは、高齢者のケアを公的機関が中心となって担ってきた。2003年6月の調査では、財政難から公的責任を後退させ、市場やボランティアの役割を拡大しようとするイギリスの最新の実態を調査できた。これにより、その後のアメリカ研究の枠組みを構築する上で必要な、高齢者を公的に支援してゆく制度の限界を探ることができた。 2004年3月のアメリカ調査では、高齢者法の大家であるピッツバーグ大学のLawrence Frolik.教授にインタビュー調査した。アメリカの社会保障制度が高齢者のみを特別に支援する根拠について意見交換するとともに、アメリカの高齢者法の最新動向について伺った。さらに、高齢者と一部の障害者のみに公的医療保障を提供するメディケアの、制度創設以来最大の改正が2003年12月に行われたために、これをめぐる現場の動向および研究者の見解を探った(本調査は、予算が足りず私費で行ったものの、本テーマについて研究を遂行した)。 本年度はまた、それまでの研究を、論文「21世紀の社会保障にむけての提言--アメリカにみる高齢者関連施策の新機軸--」にまとめたところ、2003年10月に、厚生政策を対象とする吉村賞を受賞した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 関 ふ佐子: "社会保障法判例研究「入所用ベッドを確保するためになされた特別養護老人ホームへの補助金の支出が違法であるとされた事例」"季刊社会保障研究. 39巻第4号. 462-468 (2004)
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[Publications] 関 ふ佐子: "21世紀の社会保障にむけての提言--アメリカにみる高齢者関連施策の新機軸--"月刊厚生労働(吉村賞の受賞論文として、サマリーが掲載). 3月号(発表予定). (2004)