2003 Fiscal Year Annual Research Report
金融サービス市場における行為規制の自主規制による実効性確保プログラム
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15730047
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 孝治 大阪大学, 法学研究科, 助教授 (00263187)
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Keywords | 保険法 / 保険監督法 / 保険募集法制 / EC保険法 / 英国保険法 / 保険ブローカー / 保険代理店 / 金融サービス規制 |
Research Abstract |
本年度は、EC理事会において2002年12月9日に採択された保険仲介指令(2002/92/EC)及び、同指令の国内法化に向けた作業の進んでいる英国の議論を検討した。同指令では、全加盟国における多様な保険仲介業者を明確に定義できないことが自覚され、保険仲介業を顧客に対していかなるサービスを提供し得る地位に立つか、即ち、顧客に対してどの水準の助言義務を負うかの観点から機能面に着目して定義し、EC法のレベルでは、伝統的な規制区分である代理店と仲立人の二分法によらなかった点で画期的である。これにより、従来は保険会社からの募集委託を受けて仲介業務に従事するという共通点の故に特に区別されてこなかった一社専属の仲介業者と乗合の仲介業者を、顧客に対する業務の性質の実賛的相違に即して区別し、後者の法的地位を保険仲立人に近づけて相対的に規律する視座が開けることになる。 こうした画期的視点を持つEC保険仲介指令を英国において国内法化する際に論じられた問題のうち、我が国との比較上重要なのは、仲介業者の不法行為についての保険会社の代位責任の問題である。英国では、保険会社が仲介機関の行為につき代位責任を追うか否かは保険会社と仲介機関の間の契約により定まるものとされ、保険会社が代位責任を負うべき従属的な仲介業者を指定するためには、仲介業者のコンプライアンスにつき保険会社が監督責任を果たし得ることを監督機関に対して示すことが要求されている。このことは、保険会社の監視が期待できないような独立性が高く能力ある仲介業者の行為については、保険会社の代位責任は不要であるという考え方に繋がるものである。 なお、以上の比較法研究につき、平成15年度日本保険学会において、「EC保険仲介指令の国内法化にみる保険募集法制の課題」というテーマで個別報告を行っていることを付記する。
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