2005 Fiscal Year Annual Research Report
民事訴訟法における「時問」的価値の分析とそれに基づく解釈論・制度論の再構成
Project/Area Number |
15730054
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
勅使川原 和彦 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90257189)
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Keywords | 民事訴訟 / 時間 / EU / 定期金賠償 |
Research Abstract |
司法制度と「時間」の感覚の実際に関しての研究素材となる、司法制度改革審議会の委託調査で行った『民事訴訟利用者調査』に関する2次分析研究会(代表・佐藤岩夫東京大学教授)に参画し、成果は、佐藤=菅原=山本編『利用者から見た民事訴訟-司法制度改革審議会「民事訴訟利用者調査」の2次分析』(日本評論社、2006)に結実し、私も「事件特性からみた履行状況」について一文を寄せた。 また、時間的利益を、民事訴訟法上の大原則である処分権主義がどれほど取り込めるか、という視点から、定期金賠償の訴訟法上の問題を分析した論文「定期金賠償請求訴訟と処分権主義-民事訴訟における時間的価値の捕捉可能性の検討-」を早稲田法学81巻4号(2006)に掲載が決定している。同論文では、定期金給付をめぐるすべての裁判例の動向を、平成8年民訴法改正の前と後とで整理・検討し、時間的に起こりうる当事者の現実的利益の変動を、法制度的に捕捉しているドイツ法に示唆を得ながら考察した。抽象的には既発生だが損害の具体化が将来になる類型の損害では、その時間的懸隔の間の変動要因から、定期金賠償が損害把握としては合理的である。しかし定期金賠償では、その履行も時間的経過によって確保できないリスクを負い、履行確保リスクの面では、一時金賠償に劣る。そこで、この種の損害につき、「現在額への引き直し」フィクションを受け入れて一時金給付の救済を求めるのか、履行確保リスクを甘受した上で定期金給付の救済を求めるかは、現実に救済を受けるべき賠償請求権者の処分に委ねられているとみるべきである。そうした意味での当事者の処分権は、時間的経過を要因とする損害把握の合理性と履行確保リスクの増大という時間的価値の把握を内容とするが、そうした把握により、原告の定期金給付の申立てまたは一時金給付の申立て各々に裁判所は拘束されるべきである、という結論に達した。
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Research Products
(2 results)