2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730057
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
名津井 吉裕 龍谷大学, 法学部, 助教授 (10340499)
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Keywords | 当事者能力 / 財産的独立性 / 法人でない社団 / 権利能力なき社団 / 預託金会員制ゴルフクラブ |
Research Abstract |
本年度は、最近の当事者能力に関する重要な最高裁判例についての研究を基調として、研究を進めてきた。最高裁は、平成14年6月7日第二小法廷判決において、いわゆる預託金会員制ゴルフクラブに対して民事訴訟法29条にいう当事者能力を認めた。この結論は、従来の預託金会員制ゴルフクラブに対する最高裁の裁判例(最三小判昭和50年7月25日民集29巻6号1147頁、最一小判昭和61年9月11日集民148号481頁)が当事者能力を否定する立場であったことに照らして、注目に値するものである。しかし、本判決は、それに止まらず、当事者能力に関するリーディングケースとされる最一小判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁の示した民訴法29条の「法人でない社団」の要件のうち、「財産の管理」についてより具体的な判示を行った点が重要である。すなわち、最高裁は、「団体として、内部的に運営され、対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっている」ことを、「財産の管理」ないし団体に必要な財産的側面の内容であることを明らかにしたものとみることができる。このような理解を前提にする場合、従来、民事訴訟法学において団体の当事者能力の要件として学説上掲げられてきた「財産的独立性」は、最判昭和39年および今回の最判平成14年のいずれにおいても、不要とされたものとみることができる。判例の理解として、「財産的独立性」不要説を採用したと考えることが可能ならば、本研究では、その是非を検討しなければならない。このように、本年度は、当事者能力の基礎的な研究にとって、非常に重要な意義をもつ最判平成14年の意義を分析することに研究の重点をおいてきた。後掲の「預託金会員制ゴルフクラブの当事者能力」法学教室270号は、その端緒となる研究の一つであり、その後、日本民事訴訟法学会関西支部研究会では、「当事者能力における財産的独立性について--最一小判平成14年6月7日民集56巻5号899頁の検討--」というテーマで、報告の機会をもつことができた。研究会では、本判決の分析の仕方について有意義な議論を交わすことができ、その成果は次年度に公表を予定している。すなわち、団体の当事者能力において、財産的独立性を要求するかどうかの問題は、ドイツ民事訴訟法における民法上の組合の当事者能力に関する最近のBGH判決の分析をも踏まえて、より包括的に行う必要のあるテーマであり、本年度は、その前提となるべきわが国の最高裁判決の立場を解明すること、つまり、「財産的独立性」不要説を採用したとものと見てよいかどうかの検討に重点をおいた研究を行い、一定の成果を上げることができたものと考える。なお、当事者能力の周辺問題として、本年度は、任意的訴訟担当についても一定の研究を行った(後掲)。
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Research Products
(2 results)