2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15730057
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
名津井 吉裕 龍谷大学, 法学部, 助教授 (10340499)
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Keywords | 当事者能力 / 法人でない社団 / 民法上の組合 / 権利能力なき社団 |
Research Abstract |
論文「民法上の組合の当事者能力について」の概要は、次のとおりである。民法上の組合(民法667条以下)の訴訟上の地位をめぐっては、民法上の組合が、民事訴訟法(以下、民訴法)29条の「法人でない社団」にあたるかが盛んに論じられてきた。この問題は、民訴法29条の適用範囲をめぐる議論(要件論)である。要件論について、日本法は、ドイツ法とは全く異なる方向で発展してきた。すなわち、ドイツの判例は、わが民訴法29条の母法たるドイツ民事訴訟法(ZPO)50条2項を権利能力なき社団にだけ適用し、民法上の組合には適用しないのに対し、わが国の判例は、民訴法29条を民法上の組合に適用してきた。かかる違いが生ずる原因を探ることは、当事者能力論の基本的課題である。本研究は、その準備作業として、わが国における民法上の組合の当事者能力を検討することを目的としている。民法上の組合に関するわが国の判例は、大審院以来、代表者の定めを基準として組合にも民訴法29条を適用する(最判昭和37年12月18日民集16巻12号2422頁)。他方、権利能力なき社団の要件たる、団体としての組織、代表者の定め、多数決原理の採用等の要素を基準として当事者能力を認める判例も形成されている(最判昭和39年10月15日民集18巻8号1671頁、最判昭和42年10月19日民集21巻8号2078頁)。団体の当事者能力に関する判例の二つの基準は、従来、未解明なまま放置されてきた。本研究は、組合の当事者能力に関する裁判例を網羅的に分析しているが、代表者の定めを基準とする大審院以来の判例は、最判昭和39年・42年の社団性を基準とする判例が登場しても、明確には否定されていない。また、その趣旨は、一部の学説の説くように、被告能力の側面でのみ組合への民訴法29条の適用に意味があるわけではなく、実務上の主たる活躍の場は、原告能力である。そして、民訴法29条の意義を高めるには、組合への適用を正面から肯定する理論を構築する必要がある。第一に、固有の名称の下で訴え又は訴えられたことを当事者能力が認められたことと理解する以上、従来の学説のように、組合に認められた当事者能力は形式的当事者能力ではない。訴訟において当事者能力を認めることは、訴訟法律関係の帰属点を新たに設定することである。第二に、代表者の定めは、それが認定されることにより、対外的な代表、団体としての意思形成などの組織の存在も推定される。多数決を採用する組合は民法が予定するところである以上、代表者の定めのある組合については、判例における他の社団性の要素も存在すると解することができる。第三に、民訴法29条の「社団」とは、近時の有力な民法学説が説くように、財団との区別ための概念であって、組合と社団を二項対立的に捉える必要はない。その意味で、同条の「社団」は、本質の異なる組合を排除するための概念ではない。以上から、理論的にも、民訴法29条を民法上の組合に適用することは許されてよい。 ※上記論文は、谷口安平先生古稀祝賀『国際化時代の民事手続法の課題』(成文堂)として刊行予定のものである。
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